第14話「転校生はイヤナヤツ!?」(1984年1月8日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)
【ストーリー】
畑家では新年会が行われていた。トマト(東啓子)がカラオケで「矢切の渡し」を熱唱。セロリ(斎藤晴彦)は野原院長(奥村公延)に迫っていた。逃れた院長は、トマトと踊る。トモコ(小出綾女)は絡む。
トモコ「だいたいもう、世の中の男はわかっちゃないの。もうあたし、決めました。今年中に絶対結婚します!こらナス夫、聞いてるのか!」
ナス夫(佐渡稔)は爆睡。
2階のベランダではネギ太(高橋利安)と小百合(川口智子)が星空を見上げていた。
ネギ太「あれがカシオペア。その向こうにあるのが北斗七星」
小百合「ネギ太くんって星座のこと詳しいのね」
ネギ太「いやあ」
小百合「きっとロマンチストなのね」
ふたりの手が触れそうになる。見ているペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)。
小百合「もう冬休みも終わりね」
ネギ太「そうだね」
小百合「あしたから学校か」
ネギ太「ぼく、小百合ちゃんのこと…」
小百合「なあに」
ネギ太は告白しようとするが、小百合は「じゃ、おやすみ」と帰ってしまう。
ネギ太「もう、せっかくいいムードだったのにぃ!」
ペットントン「ムニー」
新学期が始まった日、ネギ太たちのクラスに転校生・根本(玉木潤)がやってきた。小百合は、校門の前にいたペットントンを根本に紹介する。
ペットントン「こんにちは」
根本「小百合さん。何ですか、この化け物は?」
ペットントン「ウニー」
根本「なるほど、いかにも棄てられたって感じですね」
ペットントン「ウニー!」
怒るペットントン。
根本「宇宙でも下等な、いわゆる三流宇宙生物ですね」
ペットントンは目をつり上げる。
小百合「そう言われてみればそんな感じね」
小百合の言い草にショックを受けるペットントン。根本と小百合はいっしょに下校。それを見たネギ太は愕然。
いらだって壁にボールをぶつけるネギ太。その態度をガン太(飛高政幸)は訝る。
ペットントン「ネギ太妬いてる」
ガン太「誰に? ああそっか」
勘違いするガン太。
ガン太「おれは、ああいうメガネをかけた転校生は好きじゃないんだ。おれが心から愛するのは畑ネギ太、そう、きみなんだ」
ペットントン「違う違う」
勢いでガラスを割ってしまったネギ太たちは、ペットントンのタイムステッキで罪を近くにいた警官(高橋等)になすりつける。割られた家の男は「お前だな!」と警官に激怒。
夜になっても、ネギ太は沈む。そっと見ているペットントン。
翌日、ペットントンから話を聞いたトマトは、洗濯物を干しながら「ほっとけ」という。
トマト「ネギ太もそうして人を好きになったりふられたりして、それで立派な大人になってくんだからさ」
洗濯物とってと言われたペットントンは洗濯ばさみをとって、トマトの脚を挟む。
傷心のネギ太が家で寝込んでいると、小百合が遊びに来る。だが、根本もいっしょだった。根本は外国帰りを自慢し、ペットントンをバカにする。
根本「この三流生物、ケーキを食べるんですか(…)ペットントンってそれにしても面白い顔してますね」
悔しがるペットントン。
小百合と手をつないで帰る根本に対し、ネギ太の怒りは爆発。
ペットントンがおつかいに出ると、ヨーコ(若林一美)と彼が手を組んで歩いていた。ペットントンも不機嫌になり、ついボールを投げてガラスを割ってしまう。割られたのは昨日と同じ家で、通りがかった警官は「またお前だな!」とおじさんに疑われる。逃げるペットントン。
ペットントン「ネギ太の気持ち、よく判るトントン」
ペットントンが帰宅すると、トマトが慌てていた。ネギ太は根本をやっつけると言い出したという。止めに出るペットントン。
公園で、根本のしつこさに小百合は怒り気味だった。陰で見ているネギ太。
根本「ぼくはほとんどいやらしい気持ちなど持っていないから」
小百合「やめてよ、気持ち悪いのよ!」
ネギ太はボールをぶつけようとするが、ネギ太をさがしていたペットントンに当たってしまう。駆け寄るネギ太。
ネギ太「ペットントン、大丈夫!?」
根本「小百合さーん」
小百合「ふん! ネギ太くん、送って」
逡巡するネギ太。小百合は行ってしまう。
ペットントン「ネギ太、行く!」
ネギ太は小百合を追っていき、ふたりは手をつなぐ。ペットントンはこけて、根本にのしかかった。
その夜、根本からネギ太に電話がかかってきた。
根本「ぼくは必ず勝つ。小百合さんは必ずぼくのお嫁さんにする。ネギ太くん、正々堂々戦おう」
ベランダで、叫ぶふたり。
ネギ太「ぼくは絶対、小百合ちゃんをお嫁さんにするぞー」
固く握手を交わすのだった。
- メディア: Prime Video
- この商品を含むブログを見る
【感想】
1984年最初の放送で、中盤から後半のキーパーソン・根本が登場。根本は小百合に執着してストーカー的な怪行動を繰りかえす陰の主役とも言うべき人物で、『ペットントン』を盛り上げた功労者である。初登場の今回ですでに怪しい雰囲気をふりまいているが、この時点では敵役以上のものではなかったらしい。浦沢義雄先生のインタビューによると、演じる玉木潤氏が面白いので、どんどん異常さを加速させていったという(「東映ヒーローMAX」Vol.14)。それにしてもジャイアン的な見た目のガン太はあの通りだし、スネ夫的な印象の根本はストーカーで変態なのだから、よく考えてみれば驚くべき人物配置である。
序盤での大人たちの新年会では、畑家の面々と野原動物病院のふたりが飲んでいる。ナス夫たちと野原院長は親しいけれどもガン太の両親は畑家に出入りすることはないようで、第10話にて描かれたように上流階級であるゆえ、やはり庶民との接点はないということだろうか(ガン太はよく来ているが)。トモコが畑家に顔を出すのも珍しい。
トマトが唄う「矢切の渡し」は第42話など、『ペットントン』では幾度も唄われている(42話ではガン太が熱唱)。1980年代によくあった自宅で唄うカラオケ機は、当時を知る世代にはなつかしいだろう。カラオケボックスの普及はこの後の1990年ごろで、浦沢脚本では『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)などにカラオケボックスが何度か登場した。
トモコは今年中に結婚すると宣言しており、第17話でも恋愛ニュアンスの台詞を配されていた。ペットントンアレルギーを克服した後は恋愛キャラとして描いていこうという思惑があったのかもしれない(いいキャラなのにいなくなるのは惜しいな)。
その大人たちの飲み会から2階のベランダにいるネギ太と小百合へカメラがワンカットで移動するシーンは、さりげなく凝っていてなかなか雰囲気を醸し出している。ネギ太はお年玉で天体望遠鏡を買えたようで、小百合とふたりのシーンはちょっとロマンティックですらある。
学校で、先生が来ると、ネギ太と話していたガン太は「後でな」と出て行く。ふたりが違うクラスなのは、第2話、第11話の立たされるシーンでも何となく判る。
前回ではペットントンをかばって天使のようだった小百合は、今回はペットントンに冷たい言葉を投げつけている。
トマトはさりげなく含蓄のある台詞を言っており、セロリやナス夫のような怪演は少ないが、このように意外と重要な役回りを演じることがある(東啓子氏の力を抜いた感じもいい)。
根本の「ぼくはほとんどいやらしい気持ちなど持っていないから」という台詞は、『うたう!大龍宮城』(1992)の挿入歌「この世にまさしく」(作詞:浦沢義雄)の「Hなことなどほとんど望まない」を彷彿させる。
【関連記事】ペットントン聖地巡礼(ロケ地探訪)- 武蔵関(冬)
- 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
- 発売日: 2018/01/10
- メディア: DVD
- この商品を含むブログを見る