第10話「ある日突然ガリ勉生物」(1983年12月4日放送 脚本:浦沢義雄 監督:加藤盟)
【ストーリー】
ネギ太(高橋利安)の成績不振により、ナス夫(佐渡稔)とトマト(東啓子)は大喧嘩。喜ぶセロリ(斎藤晴彦)は笛で合図。庭にバリケードをつくり、ほうきや洗面器、ふたなどものの投げつけ合いになる。
ネギ太「あっ、非常事態発生」
トマト「バカヤロー」
ナス夫「これでもくらえ」
止めたいネギ太とペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)。
セロリ「もっと盛り上がりましょう。さあ、トマトさんどうぞ!」
トマトがポリバケツを投げ、セロリを直撃。
服をジャミラ状態にしたガン太(飛高政幸)が畑家へ来るが、大喧嘩の最中でネギ太は不在だった。ネギ太はペットントンと、空き地でキャッチボールをしていた。ペットントンは腕を伸ばしてボールをとる。思わずこけると、ネギ太は「大丈夫」と駆け寄る。
ガン太「仲良くしやがって。くやしー」
ネギ太はガン太に、牛乳をあげる。ぐいぐい飲むガン太。それを見る、さわやかなネギ太の笑顔。
ガン太「おれという立派な友だちがいながら、どうしてこんなやつと遊ぶの」
ペットントン「ムカー」
ガン太は嫉妬していた。
ガン太「おれ、妬けちゃうよ」
ネギ太「ガンちゃん」
ガン太「おれ、お前に甘えたい」
ネギ太「え…」
ガン太は強引にネギ太を引っ張っていく。
ガン太「こんな無教養なやつと遊ばないで、おれと遊ぼう」
ペットントン「ムキョウヨウ、ハニャ?」
ペットントンに訊かれたセロリは、マイコンに無教養と打ち込んでいた。
セロリ「まあ簡単に言えば」
コンピュータ(声:高坂真琴)が「馬鹿と云う事」と画面に表示。ずっこけるペットントン。
ナス夫とトマトは和解していた。キスしようとすると…悔しがるペットントンが乱入。
ペットントン「勉強するムニュ!」
公園のベンチで、ガン太はネギ太にくっつこうとする。ネギ太はかくれんぼしようと提案。
ガン太「おれ、ネギ太となら何でもして遊ぶ!」
ペットントンはまず「国語トントン」と、ひらがなを学習。様子を伺うナス夫とトマト。「理科トントン」と理科の実験をすると、爆発でナス夫とトマトは黒こげに。
公園でネギ太とガン太がかくれんぼ。鬼になったガン太が「7924、7925、7926」と数えている間にネギ太は逃亡。ガン太はやがて、逃げられたと気づく。
ガン太「10720、10721…ちきしょう!ネギ太のやつ、やっぱりペットントンのところに行ったんだ」
ナス夫とトマトは、ペットントンも勉強しているからと、ネギ太をスパルタ塾や過激な家庭教師を検討。帰宅したネギ太は慌てて、ペットントンの勉強を止めさせようとする。
ネギ太「お前が勉強すれば、ぼくまで勉強しなくちゃいけないだろ」
ペットントンが公園で勉強しようとすると、本の中からジャモラー(声:八代駿)が襲来。見つけたガン太は、ペットントンをネギ太から引き離すために、勉強するならうちへ来いと言い出す。
ガン太「うちならネギ太んとこと違って、静かに勉強できるから。食事だってネギ太んとこより豪華だぜ。おれの体見れば判るだろう?」
ガン太はネギ太に、ペットントンはうちで預かることにした と宣言。
ネギ太「ペットントン!」
ガン太の家は豪邸だった。驚くペットントン。ガン太の母(東山明美)は、庭にある植物や調度品の高価さを次々と自慢する。
ガン太の母「それにこの白いブランコ、目白の御殿にあったものなんでございますの。そうそう、それにこちらにございますこの盆栽。さようでございますわね、安いもので200万円くらい、それが20鉢ほどもございますかしら。あ、そうそう。それにこの石灯籠、これ1000万円」
ペットントン「ムニニー」
ガン太「その隣りにあるのが、おれが縁日で買ったサボテン。これは安物」
ガン太の家で勉強することになったペットントンは、ガン太のママから猛勉強をサービスされることに。
ガン太の母「そりゃあかわいいガン太ちゃんのお友だちですもの。ママ大サービスしちゃう」
怖い家庭教師に怒られるペットントン。
ペットントン「3割る1は4ムニュ」
家庭教師「何だお前、もっとまじめにやれ!」
頭に水の入ったバケツを載せられ「水責め」に。その次は、子どもたちに混じって学習塾。教師に木刀で叩かれる。
教師「そんなことで東大に入れるか!」
疲労困憊のペットントンが帰ってくると、ガン太の母が鉈を振り回して「勉強しなさい!」と襲ってくる。ペットントンが逃げて灯籠の上に乗っかると、1000万円の灯籠が崩れてしまった。ペットントンはタイムステッキで時間を戻す。
ガン太「ペットントンは?」
夜、ネギ太は自室で不安になっていた。
ネギ太「ペットントンのやつ、帰ってくるよな…?」
ペットントンは畑家の敷地内に入ってはいたが、室内に入りづらい。そこで腕を伸ばしてテレビのリモコンで、ナス夫の見ていたチャンネルを勝手に変える。ナス夫とトマトは喧嘩に。
ナス夫「何だその顔は!」
トマト「生まれつきよ」
ナス夫「何」
トマト「あんた、私のこの顔が好きだって言ったんじゃないの!」
ナス夫「酔っぱらってたんだよ」
トマト「世界でいちばん綺麗だって言ったくせに、あれは嘘だったの!?」
ナス夫「記憶にございません」
セロリは喜ぶ。
セロリ「さあ、力強く行きましょう!」
ナス夫とトマトは、また庭でものの投げつけ合いに。
ネギ太「また始まっちゃった。こんなとき、ペットントンがいてくれたらな」
浮かんでくるペットントン。
ネギ太「あ、ペットントン。何してんの、早くどうにかしてよ!」
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【感想】
勉強しようと思い立つペットントン。だが、スパルタ式で勉強させられる羽目に。塾などの詰め込み勉強を揶揄して描くのは浦沢義雄脚本ではよくあるが、前々作『ロボット8ちゃん』(1981)の第28話「ねつれつ もうれつ勉強大好き」は、8ちゃんが塾へ乱入し先生との狂った戦いが繰りひろげられるというおよそ脈絡のないもので、『8ちゃん』の中でも特筆すべき奇作だった。
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後年の『美少女仮面ポワトリン』(1990)になると成熟していて、主人公が受験生を教育ママから解放しようとするが、彼らは意外なことを言い出し主人公が衝撃を受けるという展開になっていて(第45話「ヤマモトは教育ママが嫌い」)、驚きとなかなかほろ苦さがあった。今回の『ペットントン』は、『8ちゃん』ほど過激な展開ではなく、『ポワトリン』ほど意表をつくものにもなっておらず、未消化の物足りなさが残る。
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第7話はラジオ体操、前回(第9話)はスポーツ、今回は勉強とペットントンにさまざまなことをさせる趣向がつづく。
いろいろと細かい小ねたはあり、ガン太の「おれ、お前に甘えたい」はかなりの破壊力を誇る名台詞。
ナス夫とトマトの喧嘩のシーンでは、オッフェンバッハ「天国と地獄」が流れて、運動会のような様相に。『ペットントン』ではポップスからアニソン、童謡までさまざまな既成曲が使われて効果を上げている。前回では「いちご畑でつかまえて」が流れ、時代を感じさせた。
ガン太の母役は『麗わしき鬼』(2007)などで知られる東山明美氏。不思議コメディーシリーズの前作『バッテンロボ丸』(1982)にも出演している(『ロボ丸』では第17話「恋のスマッシュ? バッテンショット!」と第41話「ハチャメチャ大音楽会」にそれぞれ別の役で出演)。
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ネギ太や小百合の家はいつも出てくるが、ガン太の自宅が出てくるのは意外にも今回が最初で最後だった(実は金持ちの息子だったらしい)。ちなみに第12話では、ガン太の「パパやママの悪口言うと、おれが許さないからな」という台詞がある。しかしあの母は、あれだけスパルタするならガン太を勉強させようとしないのだろうか。ガン太の成績はネギ太と五十歩百歩のはずだが、実の息子にだけは甘いのかも。
ガン太の邸宅は、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第24話「ETおばさんと扇」でも金持ちのクラス委員長の家として登場する。
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