第23話「ママを倒せ!パパは強いぞ」(1984年3月11日放送 脚本:浦沢義雄 監督:佐伯孚治)
【ストーリー】
朝、ネギ太(高橋利安)とガン太(飛高政幸)が野球に行くとき、友だち・山中(浅野雅博)は自宅を気にするそぶり。試合が始まっても山中は元気がなく、三振。守備をしてもぼーっとしている。審判は畑家の向かいのおじさん(木村修)が務める。
ペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)が山中家を見に行くと、ものを叩き付ける音がして、夫婦喧嘩で山中のパパ(うえだ峻)がママ(大井小町)に痛めつけられていた。思わずペットントンが逃げると、道で会ったヨーコ(若林一美)にわっとおどかされる。怒るペットントン。
ヨーコ「機嫌なおったら遊びに来て。あたし、サマーランドでアルバイトしてるから」
山中の不振に文句を言うガン太。ネギ太はかばう。
ネギ太「あんまり気にすんなよ。今度の試合勝てばいいんだから」
山中「ごめん」
ネギ太「行こう、ガンちゃん」
ペットントンは山中に話しかける。
山中「そう、パパとママの喧嘩見たの」
ペットントン「ムニャ」
山中はパパが弱いことを悩んでいた。
山中「ママのほうが強い。パパがだらしないんだ!」
畑家でナス夫(佐渡稔)とトマト(東啓子)が腕相撲すると、ナス夫が勝つ。
ナス夫「見直しただろう」
トマト「うん」
仲睦まじいふたり。見ているペットントン。
山中パパがひとりでパンを食べていると、ペットントンはパパを山中のところへ連れて行く。山中は犬に「お前がぼくのパパだったらいいのに」とこぼしていた。山中パパは一念発起し、強くなることを決意。だがやはりママに敵わない。ペットントンと山中パパは、友だちの輪のお告げで「サマーランドで鍛える」と言われる。
ペットントンと山中のパパが空を飛んでいくと、見かけたネギ太と小百合(川口智子)、ガン太、山中が追ってきた。
東京サマーランドのプールでパパは水着の女性(相楽晴子)ばかり見ている。ペットントンたちを追って到着したネギ太やガン太は、アイスを食べてだらけていた。小百合はペットントンに「ネギ太くんたちもいっしょに鍛えて」と言う。
山中のパパはあまり泳げない。
ガン太「お前んちの親父、ほんと軟弱だな」
山中「そう思うだろう?」
小百合「こら、そこの3人。無駄話はダメ」
ヨーコはペットントンに外の施設も使っていいと告げる。
丸太を運ぶネギ太たちと山中のパパ。男たちを鍛える小百合とペットントン。ジョギングすると、山中のパパはすれ違ったジョギングの女性について行ってしまう。
サマーランドの乗り物で追いかけっこするペットントンと山中のパパ。ジャモラー(声:八代駿)の襲来により、ペットントンは逃走。
山中パパの前に屈強の男(団巌)が現れる。さっきの水着の女性が、山中パパを指して「このおじさんよ、私のおしりじろじろ見てたの」と言いつけた。逃げ出す山中パパ。そこで山中パパはジャモラーと、ペットントンは屈強の男と戦う。山中パパがジャモラーを投げつけたせいで、屈強の男は気絶。自信を持った山中パパは山中ママに挑戦。
山中パパ「いまママに電話したところだ。ペットントン、見ててくれよ。私は必ずママに勝つ。決闘を申し込んでやった」
空き地に現れた山中夫妻。
山中ママ「あなた、何?こんなところへ呼び出して。」
山中パパ「ママ、きょうの私はいつもの私と思うな」
子どもたちが見ている。
山中「ああ、目に浮かぶ。」
ネギ太「何が?」
山中「パパが完璧にママにやられる姿が」
その通りで、山中パパは相変わらず山中ママにのされてしまう。
山中ママ「いつもと同じじゃない? さあ、今度は私の番よ」
山中ママのパンチで宙に吹っ飛ばされる山中パパ。落ちたところにトイレットペーパーがぶちまけられる。そしてそば屋の出前にぶつけられ、タイヤの中に閉じ込められる。
ネギ太「ペットントン、タイムステッキでどうにかしてあげろよ。もとはと言えば、お前の責任なんだから」
ペットントンはタイムステッキで時間を巻き戻した。
ネギ太「お前が山中のパパの身代わりになって殴られるしかないだろ」
無情なネギ太。ペットントンが喧嘩の始まる直前のママの前へ行くと、ママは驚愕。山中のパパにすがりつく。
山中パパ「ペットントン、私の愛するママに何をしたんだ」
山中パパはペットントンを追い払う。
山中ママ「パパ素敵」
何故か場は丸く収まった。
山中「ぼく、もう高望みしない。パパが強くたって弱くたって、あきらめるしかないんだもんね」
ネギ太「ぼくなんか生まれたときからあきらめちゃってるもん」
ペットントンを追いかける山中パパだった。
【感想】
ゲスト中心とは言え、かなり子どもたちも目立つ話。前回が主役回だったせいか、セロリの出番はなし。ヨーコは今回が最後の登場となった。
ロケ地である東京サマーランドは看板まで映っており、第18話を彷彿とさせる。プールにアトラクションなど施設が満遍なく登場し、露骨なタイアップぶりには苦笑させられる。
佐伯孚治演出は前回と同様に締まりがなく、中盤のだらだらとした追いかけっこは正直退屈だったのだが、ラストでどう決着させるのかと思ったらホームコメディとしてうまく着地させていたので感嘆した。「あきらめるしかない」という結論は、あきらめないで可能性を追うことが奨励されるバブル期以降としてはむしろ斬新かもしれない。実際、親や家族に関してはあきらめなければならないことのほうが多いわけだし…。
今回は久々に「一度だけの魔法」のインストゥルメンタルが流れる。プールのシーンでは「渚のシンドバッド」が使われた。
山中パパ役のうえだ峻氏は、『人造人間キカイダー』(1972)や『宇宙刑事ギャバン』(1982)、『仮面ライダー電王』(2007)など多数の特撮作品で知られる名バイプレーヤー。浦沢義雄脚本では『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』(1989)や『美少女仮面ポワトリン』(1990)などでの好演が印象に残る。近作では『相棒 Season 9』(2010)のゲスト出演が忘れ難い。
山中ママ役の大井小町氏は、不思議コメディーシリーズで浦沢脚本の『ロボット8ちゃん』(1982)の第36話「ぶりっ子 さばっ子 アイラブユー」や『勝手に!カミタマン』(1985)の第13話「爆発ゲートボール軍団」にも出演。『8ちゃん』の「ぶりっ子 さばっ子 アイラブユー」ではヤンキー的な女性役で特に強烈だった。
わずかな出番だが、映画『どついたるねん』(1989)などで知られる相楽晴子氏が水着姿の若い女性役で登場。 今回の縁なのか、本作と同じ植田泰治プロデューサーのテレビ『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』(1985)にレギュラー出演したほか、浦沢脚本でスタッフの共通する『悪魔くん』(1986)にも登場している。