第16話「恋する子ヤギのメーメー」(1984年1月22日放送 脚本:浦沢義雄 監督:加藤盟)
【ストーリー】
ネギ太(高橋利安)と小百合(川口智子)が、ふたりっきりでデートする日。トマト(東啓子)とナス夫(佐渡稔)は編み物。
ナス夫「まさかそのデート、結婚を前提に」
トマト「こら」
ペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)が嘲笑すると、ナス夫は物を投げつける。
待ち合わせの場所に小百合がなかなか来ない。焦るネギ太。小百合は、自宅前でガン太(飛高政幸)に止められていた。
ガン太「ダメ、ぜったいデートなんかさせない」
小百合「やめてよガンちゃん、どきなさいったら!」
ガン太「頼むから、おれからネギ太を奪わないでくれ」
小百合「そんなこと言ったって」
ガン太「ネギ太は、ネギ太はおれの…太陽」
「へへへー」とガン太。
小百合「もしかしてガンちゃん、ネギ太くんこと愛して…」
そこへ、ネギ太とペットントンがやって来る。ガン太はネギ太を熱いまなざしで見つめ、「おれの太陽!」と拉致。
小百合「仕方ないわ。ペットントン、私とデートしよ!」
キスされて浮かれるペットントンは、小百合と浮かび上がった。
小百合は、卒園した幼稚園をペットントンといっしょに訪れた。そこで飼われていた子ヤギのメーメー(声:上田敏也)がペットントンに話しかける。
メーメー「ペットントンだろ
ペットントン「ムニェ」
メーメー「この幼稚園にもきみの友だちのネコや犬が遊びに来るから、噂は聞いていたよ。初めまして」
ペットントン「ムニェ、オッス」
メーメーは、小百合に一目ぼれしてしまう。
メーメー「うわあ、かわゆい。なあ、ペットントン?」
夜、セロリ(斎藤晴彦)とナス夫、トマトが食卓についている。
セロリ「ナス夫。お前、刺身のつま好きだったよね。あげます」
ナス夫「ふふ、もらっちゃった」
セロリ「代わりに刺身貰いますよ」
ナス夫「か、母さん!」
雪降る夜、ペットントンが寝ていると、外から「メー」と情けない声が。ネギ太は、「やめろよ、ガンちゃん」と寝ぼける。畑家にメーメーがやって来た。
メーメー「夜分、お騒がせしてごメー惑をかけます」
ペットントンは物干し竿につかまって、2階のベランダから降りた。
メーメー「おれ、眠れないんだ。あの子のことを思い出して」
ネギ太によると、小百合のことを好きな男は、数えただけで20人はいるという。
ネギ太「その中でいちばん仲が良いのはぼくだけどね」
ペットントンはメーメーに忠告に行った。
メーメー「そりゃそうだね。あんなにかわいらしければ、男の子が放っとかないもんね。おれみたいな子ヤギとデートしてる暇なんかあるわけないもんね。メー、悲しきウンメー」
公園でドラム缶が爆発し、ジャモラー(声:八代駿)出現。ペットントンがジャモラーに襲われていると、自転車に乗ったヨーコ(若林一美)が通りかかる。
ヨーコ「これがジャモラー? かわいいじゃない?」
ヨーコになでられ、嬉しげなジャモラー。
ジャモラー「ジャモラーかわいい」
ヨーコは、「あんまりペットントンをいじめちゃダメよ」とジャモラーを放り投げる。
路上のマンホールから、銀行ギャングの2人組(山崎清、石塚信之)が出て来るが、場所を間違えたらしく中へ戻る。
ギャング「どうもすいません。わたくし銀行ギャングですが、銀行はどっちで?」
ペットントンに「あっち」と教えられた2人組はマンホールへ舞い戻る。
小百合をあきらめきれないメーメーは、公園をふらついていた。ペットントンはその場にいた幼稚園児と先生に友だちの輪の協力を依頼。
先生「子ヤギのメーメーを病気にさせて、野原動物病院に入院させればいい」
園児たち「やったーやったー」
ペットントンはメーメーを仮病を使って野原動物病院に入院させる。当惑する野原院長(奥村公延)とトモコ(小出綾女)。
野原院長「病名がさっぱり判らん。」
トモコ「もー、しっかりしてくださいよ。先生」
メーメー「見るからにヤブ医者だもんな。気がメーいるよ」
野原院長「ペットントン、このヤギ、仮病使ってるんじゃないか」
トモコの抗弁により、とりあえず入院させることに。
そこへ小百合が帰宅。ペットントンは、あの子ヤギはかわいそうだと小百合に吹き込む。「パパさん」と言って、飲んで酔っぱらった仕草をするペットントン。
小百合「大酒飲み?」
「ママさん」と言って喜ぶ仕草。
小百合「遊び好きなの?」
小百合は「判ったわ、私がかわいがってあげる」と優しく微笑む。
ペットントンがおつかいをしていると、ヨーコが「ジャモラー!」と後ろからおどかす。メーメーの話を聞いたヨーコ。
ヨーコ「あと何年も生きられないって嘘は、ちょっとやりすぎじゃないかしら」
それをネギ太が立ち聞きしていた。ネギ太はすぐ、小百合に仮病をばらしてしまった。
小百合「私をだましたのね。ペットントンなんか大嫌い!」
ペットントンとネギ太はつかみ合いに。
公園で落ち込むペットントンとメーメー。見ている小百合とネギ太。
小百合「私、ちょっと強く言いすぎちゃったかな」
原っぱが爆発し、「全然違うじゃねえか。お前、どこ掘ってんだ」とあのギャング2人組が地中から出てくる。そこにペットントンが。
ギャング「度々すいません。あの、銀行の場所をもう少し詳しく」
メーメーは「ウメー」と銀行の地図を食べてしまう。
ギャング「この野郎、銀行の書いてある大事な地図を食いやがって」
ギャングがメーメーのあごを開こうとすると、ペットントンがつかみかかる。
メーメー「このおいしさ」
ギャングとペットントンとは乱闘に! 壮絶な肉弾戦が繰りひろげられる。
ギャングはライダーキックをお見舞いするが、当たる直前にペットントンはタイムステッキで時間を戻す。ネギ太と小百合が呼んで来た警官(高橋等)にギャングは逮捕された。小百合もネギ太もペットントンも仲直り。
メーメー「ありがとう、ペットントン」
そこへガン太が「おれの太陽!」とまたネギ太を追って来た。
ネギ太「ああ、一難去ってまた一難」
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【感想】
前回の第15話が畑家の大人メインだったのと対照的に、今回はゲスト(動物)が中軸となっている。以前に見たときは印象が薄く散漫に感じたのだが、見直すとギャグありアクションありの趣向が盛りだくさんな佳作。
メインゲストはヤギ。浦沢義雄脚本では、人間同士の恋もないわけではないが、無生物の愛憎が描かれる。今回は、まだそこまで行き着くことができなかったのか、動物の恋にとどまっている。
中盤にメーメーが畑家に来るシーンでは、「一度だけの魔法」のインストゥルメンタルが久々に?流れ、冬の夜の寂寥感がうまく出ている。前話は完全にコメディ調だったので、よいコントラストになっていて、実にいい。このような叙情的なシークエンスも『ペットントン』の魅力だが、シュールな画づくりが多い加藤盟監督としては珍しいかもしれない。ペットントンが鉄棒の要領で、2階から降りてくるというのは、ありそうで他にない。
後半のギャングとの戦いは例によって全く脈絡がないが、ヤギとグリーンの化け物が野原にたたずんでいると地中からギャングが出てくるという光景には絶句。
ヤギの声を担当する上田敏也氏は前作『バッテンロボ丸』(1982)ではネクラゲ役だった。演技力は問題ないけれども、中年男性の声なので、“子ヤギ”と言われるとギャップを感じる。上田氏は、『ペットントン』につづく『どきんちょ!ネムリン』(1984)の伝説的な第10話「バス停くん田舎に帰る」にもゲスト出演し、バス停の声を演じている。そちらはおじさんっぽい役で何ら違和感はなかった。
ギャング役の山崎清、石塚信之両氏は大野剣友会所属で、『ロボ丸』『ネムリン』ではスーツアクターを担当。アクションは、おふたりのアクロバティックなやられっぷりが見もの。石塚氏はこの第16話のほかに、第31話などでも別の役を印象的に好演している。
幼稚園児役で、『もりもりぼっくん』(1986)や『おもいっきり探偵団覇悪怒組』(1987)や『仮面ライダーBLACK RX』(1988)などの中島義実氏が出演。
幼稚園の先生役の役者さんのお名前をご存じの方はご一報下さい。
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