【ストーリー】
ナス夫(佐渡稔)とトマト(東啓子)はじゃんけん。負けたナス夫はセロリ(斎藤晴彦)の買い物に同行する羽目に。
玄関でセロリは「何やってんだナス夫!」「何もたもたしてんの!」とせき立てる。「バイバイ」と嬉しげなトマト。
川沿いの公園で、ネギ太(高橋利安)と小百合(川口智子)はペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)の腕でなわとびをして遊んでいた。小百合はクラスでいちばん綺麗なママとして「カズヒコくんちのママ」「ヤヨイちゃんちのママ」などを挙げてトマトの話は出てこない。ネギ太は「あーあ」とがっかりする。
自宅の庭で手を洗うペットントン。ネギ太はトマトに迫る。
ネギ太「母さん、もう少しおしゃれしたほうがいいんじゃないの?」
トマト「いいの」
ネギ太「そのジーンズよりスカートのほうがいいんじゃないの」
トマト「こっちのほうが働きやすいの」
ネギ太「じゃあその髪を何とか」
トマトはネギ太をうるさがる。ネギ太が去ると、トマトは皿を洗って火をおこす。
ペットントンは鏡台の前に来て化粧を始める。
ペットントン「トマト綺麗にならないなら、ペットントン、綺麗になるトントン」
部屋をのぞいて訝るトマト。
ネギ太は不機嫌そうに川に石を投げ込んでいた。すると、ほお紅と口紅をつけたペットントンが登場。異様な姿にネギ太は悲鳴をあげる。
ペットントン「ネギ太のために綺麗になったトントン」
トマトは様子を見に来ていた。ネギ太はスポンジでペットントンを洗う。
ネギ太「いくらペットントンが綺麗になってもだめなんだよ」
ペットントン「なーぜトントン」
ネギ太「ペットントン、お前だって自分の母さんが世界でいちばん綺麗でいてほしいだろ」
ペットントン「ムニェ、ムニェ、ムニェ」
ネギ太「だから母さんが綺麗にならなくっちゃ」
ネギ太の気持ちを知ったトマトは決意。
トマト「ネギ太が望むような、世界でいちばん美しい母さんになっちゃう」
野原動物病院では野原院長(奥村公延)とトモコ(小出綾女)が、トマトから話を聞いた。
トモコ「子が母を思う心」
院長「これが本当の愛だ」
トモコ「先生、感動しましょう!」
泣き出すふたり。
トマト「泣いてる場合じゃないんです。あたしはどうすれば世界でいちばん美しいお母さんになれるか、相談しに来たんですから」
院長「いやあ、失敬失敬」
トモコ「考えましょう」
ペットントンは公園や公園で子どもたちに「きみのママは綺麗かトントン?」と訊く。そこへ来たトマトはペットントンに友だちの輪を貸してくれという。
野原動物病院で沈思するふたり。
院長・トモコは「世界でいちばん美しいお母さんになるには」
「先生先生先生」と友だちの輪を持って戻ってきたトマト。
院長「これはいったい何ですか?」
トマト「これはね、友だちの輪といってみんなで握って考えれば素晴らしいアイディアが浮かぶんですよ」
考える3人はペットントンの友だちの輪のお告げで、おしゃれな街に出て研究すればいいと思いつく。
トマト「便利でしょう」
トモコ「誰から借りたの?」
ちょんちょんと手がトモコをつつく。トモコが振り向くとペットントンが。
トモコは気絶。
トマトはペットントンをつれて街に出て、服やアクセサリーを見て回る。買い物に来ていたセロリとナス夫は、トマトとペットントンを見かけて「何してんだろうね?」。トマトはエアロビクスにも挑戦。しかし研究に熱中するあまり、家事を放り出してしまう。
ネギ太「ぼくのお昼は?」
トマト「あ、悪いけどペットントン、つくっといてくれる?」
ペットントンは「ムニェムニェ」と困惑。
トマト「ほら、あたし世界でいちばん美しい母になるのに忙しいから」
ペットントンにできるわけないというネギ太。するとペットントンは発奮し、冷蔵庫を開けるが中にはジャモラー(声:八代駿)が潜んでいた。
ジャモラー「ペットントンの髪の毛ごちそうジャモラー」
ジャモラーは「ムシャムシャムシャ」とペットントンに食らいつく。ネギ太が「ペットントンの料理なんて食べられるか」と居間に戻ると、ジャモラーはいつのまにか姿を消してペットントンはひとりで騒いでいた。
ネギ太「何してんの」
「買っちゃった!買っちゃった!」とセロリとナス夫が帰宅。草食系のペットントンが「おいしいよおいしい」と代わりに料理をつくったところだったが、野菜にソースをかけただけだった。
ネギ太「こんな葉っぱばっかり食べられないよ」
顔を見合わせるセロリとナス夫。
トマトはチャイナドレスになったりして、綺麗になる取り組みに没頭。セロリは「トマトさん、それはそれはwhat」と驚く。トマトは「誰が何と言おうと世界でいちばん美しいお母さんになってみせます」と宣言。
外で聞いているナス夫とネギ太、ペットントン。
ナス夫「ネギ太、お前そんなことを言ったのか」
ネギ太「まあ…」
悄然となるふたり。
セロリ「じゃあ世界一の母親となるためには、掃除や洗濯、うちのこと何にもしないと言うんですね!?」
トマト「はい、そうです」
思わず言葉が出ないセロリ。
トマト「お言葉ですがお母さま、世界一美しい母親が油にまみれてお料理つくりますか。ほこりにまみれてお掃除しますか。泡にまみれて洗濯しますか。おい、どうなの、え?」
「わかったわね!」と怖い顔のトマト。
セロリ「ナス夫、私はトマトさんの代わりに掃除とか洗濯とか絶対しませんからね!しませんからね!」
ネギ太「おばあちゃん、血圧大丈夫かな」
ナス夫は急にお腹が痛くなり、家事を拒否。
ペットントン「ずるいなあトントン」
微笑むネギ太。
ネギ太「知ってる? 掃除や洗濯って18歳未満お断りなんだ。ぼく、10歳だからやっちゃいけないんだ。ペットントン、お前ならやればできる」
「もう、みんな!」と怒るペットントン。
公園で小百合から話を聞いたネギ太。
ネギ太「じゃあ野原先生たちがうちの母さんをそそのかしたの」
小百合「そうらしいの。感動的だとか何とか言って!」
ペットントンは掃除機をかけてみるが、おもちゃやら何やら吸い込んでしまう。トマトがアイドルふうのワンピースで「世界でいちばん美しい母に見える?」と出てくると、ペットントンが掃除機でかつらを吸い込んでしまう。
「ネギ太の奴、そんなことを」とひとりごちながらパチンコするナス夫。
ナス夫「入った! ああ、また入ったー!」
ペットントンが庭で洗濯。
トマトは「どう、このハイセンス?」とまた出てくるが、庭は泡だらけになっていた。
ペットントン「トマト、洗濯終わったトントン」
「ああ…」とトマトは泡に頭を突っ込む。
「何が世界一美しい母だよ。ハハハ」とセロリは試聴コーナーでロックを聴いて踊る。
ペットントンは冷蔵庫を開けて、野菜を放り出す。今度は着物姿で階段を降りてきたトマト。だが床に野菜や食器がぶちまけられていた。ペットントンは鍋に野菜を入れてケチャップやマヨネーズをかけていた。トマトにもケチャップがぶっかけられる。
怒ったトマトと庭で追いかけっこに。両者はいつのまにか異空間に移動。トマトがタクシーから降りて、ペットントンを追う。やがて庭へ戻ったペットントンはタイムステッキで時間を止めて、何故か頭に小麦粉を載せた。トマトがフライパンで叩くと庭は粉まみれに。トマトは世界一美しい母になるのはやめて、料理も洗濯も掃除もすることを承諾する。喜んだペットントンは膨らみ、空に浮かび上がった。
川沿いでネギ太は落ち込んでいた。気遣う小百合。
ネギ太「お料理も洗濯もしない母さんなんかぼくはいらない。そんなの母さんじゃないよ」
その後ろで、ペットントンが川めがけて落下してきた。トマトが家事をまたすると聞いて、ネギ太も安心。
畑家にて皿洗いをしているトマト。
ネギ太「母さん大好き! 母さんいまのままで世界一綺麗」
そこへ女装したナス夫とセロリが「ネギ太♡」と帰宅。
ナス夫「きょうから父さん、世界でいちばん美しい父さんになる」
セロリ「おばあちゃんは宇宙でいちばん美しいおばあちゃんになる」
悲鳴をあげるトマトとネギ太、ペットントン。
【感想】
前回の父につづいて今回は母・トマトの主役回。東啓子氏の当時の実年齢は設定より若く、アップのお顔を見るといまの満島ひかりに少々似ている気がする。
ペットントンが前回につづいて家事を命じられて今回はより大きな騒ぎを起こしていて、トマトも迷惑ではあるがペットントンも十分にトラブルメーカーで、人間にも宇宙生物にも見せ場があるという意味では無難な展開だとも言える(ペットントンは第2話ではまともに家事をこなしていたので、もしかすると今回はトマトたちに反省を促すためにわざと乱暴にやっていたのかもしれない)。浦沢義雄先生は本作の約半数のエピソードは「なるべく普通っぽく。家庭劇として、作っていたつもりです」(『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1996 激走戦隊カーレンジャー』〈講談社〉)と後年に述べており、今回などが該当するのであろう。今回のタイトルはアメリカの『うちのママは世界一』(1958〜1966)の引用で「普通っぽ」い「家庭劇」を意識したことが伺える。最終的な結論は母親は形姿の美しさを追求するよりも家事に勤しむべきだというもので、いかにも80年代前半の価値観だが、ラストに浦沢脚本の『仮面ライダー × 仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』(2012)を彷彿とさせる唐突な落ちが用意されている。
この2年後の浦沢脚本『勝手に!カミタマン』(1985)の第33話「ママのオシャレ大作戦」ではママと妹がファッショナブルになろうとするが、そちらでは美しさよりも暮らし全体を変えようと躍起になっており、容姿だけでなく生活スタイルを追い求める風潮へと時代の趨勢が変わっていったことが伺える。
浦沢脚本は概ねいつも「感動」を忌避しており、トモコに「感動的です」ではなく「感動しましょう」という台詞を言わせているのは「感動なんて努力してするものだ」とでも言いたげなシニカルな姿勢が垣間見える。
今回の広田茂穂監督は1970年代半ばから80年代前半にかけて『快傑ズバット』(1977)や『電子戦隊デンジマン』(1980)、『仮面ライダースーパー1』(1980)などの特撮作品を撮っており、不思議コメディーシリーズでは前作『バッテンロボ丸』(1982)につづく参加。
クライマックスのトマトとペットントンの追いつ追われつは長いが、この部分はおそらくシナリオに詳細な指定はなく演出の領域であったと想像される。所沢航空記念公園のステージに木やポスト、横断歩道などの簡易なセットを配置するというアイディアで、第20話「根本君はスーパースター」や次作『どきんちょ!ネムリン』(1984)などの特異な映像感覚に比べると物足りなさを覚えなくもないが、まだシリーズ序盤であることを思えばその健闘は称えなければならない。このステージは第35話でも使われているほか、『ネムリン』の第5話「アキカン怪物の大逆襲」では同じステージが路地に見立てて撮影されている。
今回、エンディング主題歌が劇中で流れるのは前半のシリアスな場面で、前回のようにコミカルな騒動にかぶさってしまうような違和感はない。
セロリがロックを聴きながら踊るシーンでは手前に「よいこのゴールデン童謡」「犬のおまわりさん」などというレコードが映され、笑いを誘うとともに本作の反骨精神が感じられる。
買い物のシーンは吉祥寺で撮られている(吉祥寺は第29話でも使われた)。
掃除のシーンでは、本棚に『ドラえもん』『キャプテン ハーロック』『鉄腕アトム』『釣りキチ三平』が並んでいる。
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