第41話「のりもの嫌いのドラキュラ」(1984年7月15日放送 脚本:浦沢義雄 監督:冨田義治)
【ストーリー】
畑家でゲームに興ずるネギ太(高橋利安)とペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)。セロリ(斎藤晴彦)とナス夫(佐渡稔)はアイスを食べている。庭で警官(高橋等)と話すトマト(東啓子)。
セロリ「最近トマトさん老けたと思いませんか」
ナス夫「いや、別に」
警官によると、葉っぱバーガーの葉波博士が刑務所から脱走したのだという。来たらすぐ連絡すると言うトマト。
セロリ「ナス夫、お前トマトさんとの結婚、後悔してんじゃないのかい」
ナス夫「母さん、いい加減にしてください」
居間に戻ってきたトマト。
セロリ「ナス夫がね、あなたとの結婚を後悔してるんだそうですよ」
怒るトマトに困惑するナス夫。喜ぶセロリ。
川原にいるネギ太とペットントン。
ネギ太「おばあちゃんのことはどうでもいいんだ」
ペットントン「ムニェ?」
ネギ太「ああいう特別な性格だからあきらめがついている」
ペットントン「ムニェ」
ネギ太「問題は父さんと母さん」
ペットントン「ムニェ」
ネギ太「両親としての威厳とか、尊敬できるとかそんなものはどうでもいいんだ」
ペットントン「ムニェ」
ネギ太「そんなもの、子供がおだててやれば、どこの両親でもそれらしく見えるもん。両親が喧嘩すると、子どもが傷つく。問題はそれだよ」
野原動物病院にいるガン太(飛高政幸)と小百合(川口智子)、ペットントン。ネギ太が傷ついたと聞いて泣くガン太に、小百合は涙をふけとばかりにバケツに入った雑巾を渡す。怒るガン太。
小百合「やっぱりそういうものなのかしら。ネギ太くんち、しょっちゅう喧嘩してるから、ネギ太くん慣れてると思ったんだけど」
小百合「難しい年ごろなのね」
ガン太「よし、おれがネギ太んちのおばさんとおじさんに説教してやる!」
「よしなさいよ」「事が大きくなるだけだムニェ」と言う小百合とペットントン。
ガン太「何なの何なのお前たち、そういう無関心な態度でネギ太が救われると思ってんの」
小百合とペットントンは詰まる。
ガン太「ネギ太はおれを待っている!」
畑毛ではナス夫とトマトの口論がつづく。嬉しげにやって来るガン太。
ガン太「やってるやってる」
笑顔のガン太はネギ太を呼ぶ。ネギ太も「きょうぼく、ガンちゃんと遊ぶ気分じゃないよ」と、不機嫌。ガン太は、「聞いた、いまの台詞?」とナス夫とトマトを非難。
ガン太「ネギ太をこんな暗い性格にしてしまった責任は、おじさん、おばさん、あんたたちにある!」
押しつけがましいガン太を、厭がるネギ太。
ガン太「ネギ太、おれはお前を救う」
ネギ太「やめてよ!」
ガン太「そう、その照れるところがいい。その照れる性格。ネギ太、お前の財産だ」
そこへ現れたセロリが「この出しゃばり!」とガン太をはたく。
ガン太「どうしておれが国民年金もらってる人に殴られなきゃいけないの」
セロリ「喧嘩してた夫婦がね、ひとつの目標に向かって協力して愛が芽生えるの。それがこの夫婦のパターンなんだから、余計なことするんじゃないんだよ」
「結婚後悔、結婚後悔、結婚後悔」とはしゃぐセロリは、ナス夫とトマトににクッションを渡す。クッションで叩き合いを始めるナス夫とトマト。耳をふさぐネギ太。
ガン太「ああ、ネギ太が暗くなる、暗くなる。おじさん、おばさん」
セロリ「いいんだよ!子どもは暗いくらいがちょうどいいんだよ」
また川原に来たペットントンとネギ太。ペットントンがガン太に喋ったせいで、ナス夫とトマトの喧嘩がもっと激しくなったと怒るネギ太。そこへジャモラー(声:八代駿)が。ペットントンはよけ、ジャモラーは川へ落っこちる。
ペットントンは友だちの輪のお告げで、ナス夫とトマトを仲直りさせるために後楽園ゆうえんちのお化け屋敷に連れていくことに。
畑家の庭では、ナス夫とトマトがバトルを展開。喜ぶセロリ。ガン太は、猿ぐつわをはめられて縛られていた。そこへ飛んできたペットントンは、上空からセロリを直撃。セロリはのびた。
ペットントンはナス夫とトマトをつれて、後楽園ゆうえんちへ行く。とまどうふたりを、ペットントンは“世界怪奇館”へ引っ張っていく。怖がるふたり。
トマト「な、何であたしたちがこんなとこ来なきゃいけないの」
ペットントンもお化けの中に混じっていた。怖がって手を握り合うふたりの前の棺桶が開き、中からドラキュラが。
ドラキュラ「ナス夫さんにトマトさんじゃ」
ナス夫「私には、お化けに知り合いなどいません。トマトの親戚では」
トマト「あたしだって、お化けの親戚なんか」
ドラキュラ「わしじゃ、わしじゃ」
葉っぱバーガーの葉波博士(市川勇)だった。
葉波「刑務所を脱走してな、ここでドラキュラのアルバイトをやっとるんだ」
ヒヒヒと笑う葉波博士。どちらが博士をつかまえるかで、また喧嘩になるナス夫とトマト。
ナス夫「お前には亭主を立てるということができんのか」
トマト「やったわね」
つかみ合いになるふたり。ペットントンも止めに入る。
トマト「ナス夫さんの好きなようにすればいいでしょ。私だって好き勝手させてもらいますから。葉っぱバーガー博士、デートしましょ」
驚く一同。
ナス夫「勝手にしろ。ペットントン、飲もう!」
トマトと葉波博士は、ふたりでジェットコースターや絶叫マシンに次々と乗っていた。
ベンチで、ぐいぐい飲んでいるナス夫。ペットントンは、お化け屋敷につれて行ったのに喧嘩が収まらないので、友達の輪が壊れたのかなと疑う。そこへ、絶叫マシン責めでふらふらの葉波博士が。
葉波「ペットントン、助けて」
「殺される…」と追いすがる葉波を、ペットントンは「うるさいな」と突き飛ばす。するとペットントンの視界に、お化け屋敷が。
ペットントン「ここがお化け屋敷?」
さっきの葉波博士のバイト先は、“世界怪奇館”だった。
ペットントン「友達の輪は壊れていないんだムニェ」
喜んで、葉波と跳ね回るペットントン。ペットントンはタイムステッキを使い、後楽園ゆうえんちに来た時点まで巻き戻した。ペットントンは「大人2枚」と切符を買い、ナス夫とトマトをお化け屋敷に押し込む。そして腕を伸ばして、交番で居眠りしている警官を後楽園まで連れてきた。
警官「ペットントン、どうしたんだよ、こんなとこまで呼び出して。本官は忙しいの」
ペットントン「葉っぱバーガー博士がいたぞ」
怪奇館へ来た警官は、ドラキュラに扮して棺桶から出てきた葉波博士を逮捕。
葉波「バイバーイ。さあ、行くぞ!」
葉波は連行されながら走り出し、警官は「あ、ちょっと!」と引っ張られる。
ペットントン「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」
お化け屋敷から出てきたナス夫とトマトはすっかり仲直りしていた。
トマト「怖かった」
ナス夫「大丈夫、おれがついてるよ」
畑家でも仲睦まじいふたりは、食卓で「あーん」などとやっている。
セロリ「もうちょっとで離婚だと思ったのに」
なぜかガン太もいっしょに食べている。ガン太は「ネギ太、おれたちも、あーん」と言い出す。
ガン太「愛のファンファーレ、パンパカパーン!!」
【感想】
葉波“葉っぱバーガー”博士の最後の登場篇。前2回(第15話、第34話)とは異なり、今回は特に悪事に手を染めてはおらず、遊園地でバイトしていたり、トマトに振り回されたり、何だか哀れを誘う。
葉っぱバーガー博士の回はいつも畑家の面々が活躍するが、今回もナス夫やトマトがメイン。ここのところ子どもたちが目立っていただけに、ちょっと新鮮に映る。ジャモラーも久々に登場。
ナス夫とトマトの喧嘩に傷つくネギ太。セロリとトマトの不仲に閉口するネギ太は第24話などでも描かれており、アドリブ合戦で愉しげに見える畑家のシリアスな側面が描かれた(ただし次々回でのネギ太は、たくましく生きると開き直っている)。ガン太や小百合、根本ももちろん重要キャラだが、本来メインだった畑家の人びとに改めてスポットが当たったのには、シリーズが終わりに近づいていることを実感させられる。
ネギ太が落ち込む場面では、エンディング主題歌「一度だけの魔法」のインストゥルメンタルの哀しげなバージョンが久々に流れており、ばかばかしさとこのせつなさとの落差も『ペットントン』の、いや浦沢義雄脚本による不思議コメディーの妙味である。
ナス夫とトマトを喧嘩させて離婚するようにセロリが仕向けるのだが、セロリは「喧嘩してた夫婦がね、ひとつの目標に向かって協力して愛が芽生える」とも言っており、その行動原理は未婚の筆者には不明(誰か教えてください)。
畑家のフューチャー回ではあるが、やはり第15話とは異なり、しっかりガン太や小百合の出番も。ガン太の「国民年金」は『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)の第6話、『俺たちは天使だ!』(2009)などにも登場する浦沢ワード。後半の展開はありがちだが、ガン太には今回も笑わされる。
ロケ地の後楽園ゆうえんちは東映特撮の定番ロケ地のひとつで、第31話でも使われている。怪奇館にお化け屋敷に絶叫マシンと、宣伝のようにさまざまなアトラクションが登場。
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