第39話「一回百円!? オミッチャン」(1984年7月1日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)
【ストーリー】
お経を唱えるセロリ(斎藤晴彦)と、横で木魚を叩くペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)。「お母さまの腰巻き、派手ねえ」と、洗濯物を取り込むトマト(東啓子)。テレビの競馬に見入るナス夫(佐渡稔)。
セロリが寝そうになると、ペットントンはセロリの頭を叩き、喧嘩に。勢いでペットントンはトマトの畳んだ洗濯物をぐしゃぐしゃにしてしまう。トマトは激怒し、ペットントンの頭をつぶして蹴飛ばす。蹴られたペットントンは、ナス夫の見ていたテレビをひっくり返してしまい、怒ったナス夫にもつぶされる。
ペットントンは「ペットントン許さない!」と、庭でネギ太(高橋利安)に怒りを訴える。
ペットントン「ネギ太、セロリの孫やめろムニェ」
ネギ太「え」
ペットントン「ナス夫とトマトの子どももやめろムニェ。あ、それがいいそれがいい」
ネギ太「お前ちょっと調子乗り過ぎだ!」
公園では、男子小学生が列をつくっていた。ガン太(飛高政幸)が、「次!」と急かす。ものまねが特技だという男子が来ると、
ガン太「小百合、お前のボーイフレンドにしちゃ、ひょうきんでいいんじゃないの」
首を振る小百合(川口智子)。
ガン太「ネギ太より、将来性もありそうだし」
また次の男子が来るが、
小百合「ガンちゃん、いい加減にしてよ。私、ガンちゃんからネギ太くんをとろうなんてこれっぽっちも考えていないんだから」
ガン太「小百合は思ってなくても、ネギ太の気持ちはお前に向いてんだ。しょうがないだろ」
私の責任じゃないと言う小百合に、
ガン太「早い話が、お前がもっとブスになればいいんだよ」
男子小学生「あのう、ぼくの番なんだけど」
小百合「ごめんなさい、私いまのところ、誰ともつきあいたくないの」
あーあ、と帰っていく男子小学生たち。
ガン太「お前、本当に残酷だな」
小百合「どうして?」
ガン太「見ろよ、あいつらあんなに傷ついちゃって」
小百合「そんなこと言ったって」
不機嫌なペットントンが歩いてくる。
ガン太「こうなりゃしょうがない。小百合、ペットントンと結婚を前提につき合え!」
驚く小百合。
小百合「冗談じゃないわ。何で私がペットントンと結婚を前提につき合わなくちゃいけないの!? 全く人をバカにして」
小百合は行ってしまう。
ガン太「それもそうだな。ペットントンと結婚を前提につき合えなんて言ったら、誰だって怒るよな。ははははは、おれとしたことが」
ガン太も行ってしまう。怒るペットントン。そこへオミッチャン(福原一臣)が登場。オミッチャンはオオオオオと笑いながら、またカメラに向かって自己紹介。
ペットントン「早くミッチャン星へ帰れ」
オミッチャンは、宇宙に帰ろうとペットントンを誘う。
オミッチャン「地球人ってあんなものよ。」
ペットントン「ムニェ?」
オミッチャン「だいたいこの地球の人間ってやつは、宇宙人をバカ・バカ・バカ・バカ・バカにしてるのよ。そうじゃない? そうは思わない、ペットントンちゃん?」
ペットントン「ムニェ…」
オミッチャン「なぜあんたが、あのセロリのばばあやトマトやナス夫、それにあのネギ太なんかに、ううううう、叩かれなきゃなんないの」
嘘泣きのオミッチャンはカメラにニヤリ。
オミッチャン「それにあの小憎らしい小百合、そのうえ、あの人類とは思えないガン太にまでバカに、バカにされてるじゃないの」
オミッチャンは、宇宙に帰ろう、宇宙はペットントンを待っていると誘う。考え込んだペットントンを、オミッチャンはハンマーで殴る。
駐車場に、オミッチャンのショートケーキ型UFOが停泊。ペットントンはUFOに縛られていた。ペットントンは厭がって暴れる。
オミッチャン「何という馬鹿力!」
ペットントンが引っ張ったため、UFOはまた壊れる。「宇宙に帰れない」と泣き出すオミッチャン。ペットントンが帰ろうとすると、
オミッチャン「もう、じれったいわね。バカバカ。あたしがこんなにくさい芝居やってるんだから、友だちの輪でこれから先どうやって生きていけばいいのか、教えてくれたっていいじゃないの」
ペットントンが友だちの輪を使うと、働けばいいと言われる。
公園で、体を張った仕事を始めるオミッチャン。
ペットントン「さあ、さあ、さあ、安いよ。1回100円、1回100円、オミッチャン乗りだよ。さあ、いらっしゃい」
オミッチャンは四つん這いになって、子どもを乗せる。
オミッチャン「パカパカパカパカ」
ペットントン「1回100円、オミッチャン叩きだよ。さあさ、叩いて」
もぐら叩きの要領で、オミッチャンは子どもに叩かれまくる。
ペットントン「1回100円、オミッチャンすくいだよ。さあさ、すくってすくって、さあさ、うまくすくえたらお持ち帰りできますよ」
桶の中で、網でいじられるオミッチャン。
畑家の庭で、ネギ太と小百合、ガン太がアイスを食べていた。
ネギ太「それで小百合ちゃんの気に入りそうなボーイフレンドになれるやついなかったの」
浮かない顔の小百合。
ガン太「ネギ太、お前やけに嬉しそうじゃん」
オミッチャンとペットントンが来る。
小百合「オミッチャンがまたペットントンに何か悪いことしたんでしょう」
オミッチャン「おだまり!」
オミッチャンは、UFOをペットントンが直すまで畑家に居候すると宣言。
ペットントンは、駐車場でUFOの修理に挑む。畑家で、ネギ太たちがトランプをしている横で威張るオミッチャン。
オミッチャン「あんたんち、ジュースとかビールとか何かこう気の利いた飲み物はないの」
小百合「オミッチャン、あんたいい加減にしなさいよ」
ガン太「そうだよ、だいたい居候のくせしてさ、そんな大きい態度とっていいと思ってんの」
小百合「そうよ、全日本居候連盟に訴えてやるから」
オミッチャン「え」
ガン太「テレビ局に投書して社会問題にしてやるからな」
3人はオミッチャンを指差す。
ネギ太・小百合・ガン太「疑惑のオミッチャン」
ネギ太たちは人生ゲームで遊ぶ。
ネギ太「何ぐずぐずしてるの。こっちも汚れてるよ」
掃除するオミッチャン。つづいて、野菜炒めをつくる。
小百合「宇宙人なんてどうせ陰で地球人の悪口しか言わないんだから。こき使ってやるに限るのよ」
オミッチャンは激怒。
オミッチャン「私たち宇宙人が、どんなに苦労してこの地球に住んでいるのか、あんたたち地球人は知らなすぎるのよ!」
驚き逃げ出す3人。
ペットントンは「安い部品使って」と言いながらUFOを修理。やがて修理は完了。
ペットントン「UFO、宇宙に行けるムニェ。素晴らしい。ぼく天才」
そこへガン太と小百合が、「オミッチャン怒っちゃった」と走ってくる。ガン太がレバーを引いてしまい、UFOは浮上。
ガン太「おれたち、このまま宇宙に行っちゃうの」
小百合「ガンちゃん、このUFO壊すのよ!」
ペットントンは「せっかく直したのに」と止めるが、ふたりが暴れたせいでUFOは落下。
ネギ太は、資材置き場でオミッチャンに追いかけられていた。
ネギ太「べろべろばー」
だが追いつめられる。そこへUFOが墜落。黒こげの小百合とガン太、ペットントンが出てくる。
オミッチャン「よくもあたしのUFOを壊したわね」
オミッチャンはペットントンたちを狙って光線を発射するが、UFOに命中。UFOはバラバラに。ペットントンはタイムステッキを使って光線を跳ね返し、光線はオミッチャンに当たる。
夕食の食卓は、ナス夫とトマト、ネギ太の3人。
トマト「お義母さまは?」
ネギ太「まだプールから帰ってきてない」
ナス夫「溺れたか?」
ペットントンは、UFOを修理するオミッチャンにつきまとっていた。
オミッチャン「もういいから帰ってよ。あんたにUFOまかしておいたら、これ以上に壊れちゃうわ」
「まかせなさい」と帰らないペットントン。
オミッチャン「いちごちゃん、どうしたらいいの」
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【感想】
またオミッチャンのフューチャー回だが、今回は過去のオミッチャン篇のようにペットントンを宇宙に連れて行こうとしてドタバタが起きるのではなく、趣向を変えた内容になっている。強烈なエピソードがしばらくつづいた中で、ひと休みかなという感(次回はまた濃厚…)。
オミッチャンすくいの場面など、普通は人間でない生物や無機物がやることを人間にやらせるという、浦沢脚本らしい発想(『どきんちょ!ネムリン』〈1984〉の第18話「さすらいの除夜の鐘」では、いつも突かれる鐘が逆に人間を突くシーンがあった)。また小百合の「宇宙人なんてどうせ陰で地球人の悪口しか言わないんだから。こき使ってやるに限るのよ」という台詞など、「宇宙人」と「地球人」の部分を嫁や姑に代えればホームドラマになりそうで、日常的な言動・行動に人間でないものを当てはめてしまうのも浦沢脚本のお家芸と言えよう。27年後の浦沢脚本 × 坂本太郎演出のコンビによる『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)の第24話「愚かな地球人」では、今回のような地球人社会における宇宙人というねたが全面展開されており、「宇宙人をたこ焼き屋の弟子にしようなんて、あたしが許しても保健所が許可しない」という台詞もあった。
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中盤でのガン太の「テレビ局に投書して社会問題にしてやるからな」という台詞は、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第2話「怪人大相撲」での「この問題で区の教育委員会が動くかもしれん」 「テレビも取材に来るな」 「うん、NHKは絶対ドキュメンタリー作るよな」という台詞を想起させる。
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前半では、小百合が「いまのところ、誰ともつきあいたくない」という台詞を発しており、ネギ太のことは眼中にないらしい(次回では、ふたりは仲良く手を握り合っているのだが、それは坂本監督の演出ゆえか…)。宇宙人をこき使ってやれと言うあたりなど、久々に小百合の鬼のような面が伺える。彼女は、オミッチャンや根本といった軽視している連中と関わるとき、夜叉と化すのだ。
今回のようなオミッチャン篇でも結局目立つのは子どもたちで、大人中心だった初期を思うと隔世の感。子どもたちは好演していて、セロリたちの出番もないわけではないので何ら不満はないけれども、ヨーコやトモコがなつかしい気も…。
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