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『ペットントン』研究

『ペットントン』(1983〜84)を敬愛するブログです。

第36話「豆腐がおこった日」(1984年6月10日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

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 ある朝、登校するネギ太(高橋利安)と小百合(川口智子)、ガン太(飛高政幸)。急にネギ太が立ち止まり、「カメラか」とカメラのほうを見て近寄ってくる。

ネギ太「きみはお豆腐が好きか。お豆腐にも夢があることを知っているか。すべては夕飯のおかずから始まった」 

 

 畑家にて、大袈裟な口調で夕飯のおかずを何にするか悩むトマト(東啓子)。

トマト「きのうはカレーだったし、ああ!一昨日はてんぷら…」

 トマトはペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)の友だちの輪を奪って、おかずは麻婆豆腐に決める。お使いを命じられたペットントンは、「トマト、全く人使い荒い…」とこぼしながら材料を買いに行く。だが豆腐屋は休みで、スーパーでは豆腐は売り切れ。

 困ったペットントンは、公園で行商の豆腐売り(白鮮)に出会った。

豆腐売り「(豆腐を見せて)ジロウにエリカにユキミにキミヒコに、タダマサです」

 ペットントンが麻婆豆腐をつくりたいと言うと、

豆腐売り「だったらキミヒコが。キミヒコー」

 桶の中の豆腐が浮かび上がる。

豆腐売り「キミヒコは麻婆豆腐になりたかったお豆腐なんです。な、キミヒコ?」

ペットントン「ムニュ。キミヒコ?」

豆腐売り「ふふ、ジロウは冷や奴に、エリカはお味噌汁、ユキミはすき焼き、タダマサは寄せ鍋に…。お豆腐だって夢はあるんです」

 豆腐売りは、くれぐれもキミヒコを麻婆豆腐以外には使わないよう念を押す。ラッパを吹いて歩み去って行く豆腐売り。

 

 暗くなってペットントンが帰宅すると、ペットントンの帰りが遅いので畑家のおかずはコロッケになっていて、セロリ(斎藤晴彦)やナス夫(佐渡稔)たちが食べていた。夜、寝ているネギ太の横で豆腐のキミヒコが気になるペットントン

 翌朝、包丁の音でペットントンは目覚める。トマトがキミヒコを味噌汁の実にしてしまっていたという。慌てるペットントン。だがよく見ると、鍋の中に豆腐が入っていない。

トマト「あら、おかしいわ!」

ナス夫「どうしたんだ」

トマト「お豆腐が全然入ってないのよ」

ネギ太「入れ忘れたんじゃないの?」

トマト「え、まさか」

セロリ「ナス夫、こんな嫁と即離婚しなさい」

ナス夫「考えときます」

トマト「あなた〜!」 

ナス夫「冗談、冗談だよ」

 

 ペットントンが手紙を出しに行くと、ポストからジャモラー(声:八代駿)が飛び出して襲って来たので、ペットントンはジャモラーに切手を貼り付けてポストに押し込む。その帰り道、道で豆腐が飛んでくる。が、すぐに消滅。つづいて公園でブランコに乗っていた豆腐が襲ってくる。だが、気がつくとそれも消える。

ペットントン「おかしいな」

 

 ペットントンがボートに乗っていると、水中から次々と豆腐が浮上。ペットントンは豆腐に包囲されていた。

ペットントン「こっちにもあっちにも豆腐、豆腐!?」

 怯えるペットントン。そこへ、あの不思議な豆腐売りがボートをこいでやって来る。

豆腐売り「キミヒコは大豆のころから麻婆豆腐になりたかったお豆腐だったんですよ。それを、それをお味噌汁の実に…」

 豆腐売りは泣く。

豆腐売り「お豆腐だって夢はあるんだ!ペットントンくん、きみはキミヒコの夢を打ち砕いたんだ」

ペットントン「ごめんなさい!ごめんなさい!」

豆腐売り「私に謝っても無駄です。仮に私が許しても、お豆腐さまが許しません」

ペットントン「お、お豆腐さま?」

豆腐売り「木綿豆腐、絹ごし豆腐、卵豆腐、焼き豆腐、厚揚げ豆腐、すべてのお豆腐が尊敬する神、それがお豆腐さまです。ペットントンくん、きみはお豆腐さまの祟りを受けなければいけません」

 ラッパを吹く豆腐売り。豆腐は宙を飛び、ペットントンの周りを旋回。そして中空で合体して巨大化。巨大豆腐は、ペットントンをズシズシと殴り始めた。

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 帰宅したネギ太と小百合、ガン太は、ペットントンに話を聞かされる。

ガン太「だいたいお豆腐に夢があるなんて生意気だよ」 

ネギ太「ほんと。ぼくなんかどっちかというと将来暗いほうなのに。な?」

小百合「うん。お豆腐の希望なんて聞いてられない世の中なのよ」

 その会話を、外で豆腐売りが聞いていた。

 

 ペットントンやネギ太たちが公園で遊んでいると、ペットントンがボールを取りに行っている間に、ネギ太たちの前に豆腐売りが現れる。

豆腐売り「お豆腐をバカにしましたね」

 にやりと笑った豆腐売りは、「お豆腐売りの祟り!」とネギ太たちの顔に豆腐をぶつける。

小百合「何すんのよ!」

 だが3人は豆腐がおいしいので、

ガン太「もっとぶつけて!」

ネギ太「うん、ぶつけて」

 驚く豆腐売り。

ネギ太「こんなおいしい豆腐初めて」

小百合「私、祟り大好き!」

 3人は豆腐ちょうだいと豆腐売りに迫る。

 

 3人は、豆腐売りの家にまで押し掛けていた。

豆腐売り「頼みます、お帰りください」

 そこでガン太が綱を指す。それは冷奴地獄を起こすものだった。

豆腐売り「それは、冷奴地獄の!」

ネギ太「冷奴地獄?」

豆腐売り「お豆腐にいたずらしたりいじめたりする人間をお仕置きする機械です」

ガン太「面白そう」

小百合「ガンちゃん、やってみて」

ガン太「うん!」

豆腐売り「ああっ」

 ガン太が引っ張ると、天井から巨大な豆腐が3人と豆腐売りめがけて落下。みな豆腐まみれに。上から鰹節が降ってきて、食べ始めるネギ太たち。鰹節に加えて、ネギと醤油まで降りそそぐ。

小百合「ファンタスティックね」

豆腐売り「どこがファンタスティックなんだ! ああお豆腐さま」

 食べつづける3人。ペットントンも豆腐売りの家にやって来た。

豆腐売り「ペットントン、助けて。このままじゃ冷奴責めにあって死んでしまう」

 ペットントンはタイムステッキで時間を戻した。だがまだ豆腐を食べたがるネギ太たち。

豆腐売り「きみたちはいったい親からどういう教育を受けてきたんだ」

 豆腐売りは怒り出す。

豆腐売り「お豆腐大明神!!」

 閃光とともに地響きが。

 

 気がつくと、ペットントンと3人は豆腐大明神の神社の前にいた。ネギ太と小百合、ペットントンは一応お参りする。ガン太はカメラに向かって語りかける。

ガン太「きみはこの物語を信じるか。もしきみの家の今晩のおかずが豆腐だったら、その豆腐に確かめよう。その豆腐の夢は、いったい何なのかを…」

 ラッパの音が鳴った。

 

【感想】

 第30話につづく、無生物路線。後続の浦沢義雄脚本『どきんちょ!ネムリン』(1984)などのように無生物が喋って動くわけではなく個人的にはまだ少々食い足りない感もあるが、直線的な展開だった30話に比べれば奇抜な筋立てになっており、後年の飛躍の片鱗が伺える。

 特徴的なのはタイトルで「豆腐がおこった」と銘打っているにもかかわらず、後半はドラッグまがいの豆腐にネギ太たちがはまってしまう展開になって、夢を砕かれた豆腐の怒りはほぼ関係なくなる点だろう。第8話「ゴリラvsびっくり看護婦」や第30話「横浜チャーハン物語」ではタイトルロールのゴリラやチャーハンは後半にやっと登場しており思いつきにまかせて書かれたシュールな構成という印象だったが、豆腐の怒りが早々に放置されてねじれていく今回は、シュールを通り越して気持ちの悪い後味を残す。

 全編コミカルだった第30話とは打って変わって、映像面でも悪夢のような無気味さが立ちこめる。前半でペットントンが豆腐に襲われるシーンでは画面が暗く呪われた(!)雰囲気で、フィルター処理しているのだろうか。変な構成に加えてこの映像では、幼いころに見たらトラウマ必定の不穏さである。 

 

 同時撮影の第35話につづいて、こちらも子どもたちの出番が多く(以前ならば同時進行のひとつが子どもメインならば、ひとつは大人やゲスト中心だった)、この時期の『ペットントン』が完全に子どもたちを中心に回っていることが判る。

 

 豆腐がペットントンの上で旋回するシーンには、どうやって撮ったのだろうと感嘆させられる。浦沢脚本 × 坂本太郎演出では、『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)の第6話「大地に足をつけて」でも豆腐が飛ぶシーンがあったが、あちらはいかにも吊っている動きで、この第36話のほうが巧みだった。

 実物の豆腐がブランコに乗っているシーンは傑作で、『ネムリン』の第10話「バス停くん田舎へ帰る」のバス停がボートに乗っていたり駅のホームに立っていたりするシーン、『有言実行三姉妹シュシュトリアン』(1993)の第30話「涼電話の夏」の電話が温泉に入っているシーンなど、実物を使って実写で撮るゆえの愉しさが際立つ。

 

 豆腐売りの「仮に私が許しても、お豆腐さまが許しません」という台詞は後年の浦沢脚本美少女仮面ポワトリン』(1990)の決め台詞を思わせる。

 豆腐売りの口から“お豆腐大明神”の存在が語られるが、今回と同じ浦沢脚本 × 坂本演出の『ポワトリン』第17話「消えた鯉のぼり」では少年好きの“ナマズ大明神”が、やはり浦沢脚本の『TVオバケてれもんじゃ』(1985)には“電気大明神”が登場する(筆者は、後者は未見)。

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 今回わずかに出てくる豆腐屋のお店は、先述の『ちゅうかないぱねま』にも出てくる。

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