第34話「アンコがいっぱいET焼き」(1984年5月27日放送 脚本:浦沢義雄 監督:加藤盟)
【ストーリー】
畑家では、ナス夫(佐渡稔)が料理に挑戦。お腹をすかして待つセロリ(斎藤晴彦)とトマト(東啓子)、ネギ太(高橋利安)、ペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)。セロリは空腹のあまりナプキンにかじりつく。
トマト「お母さま、お止しになって!」
上機嫌のナス夫。
ナス夫「きょうから私がつくるカレーを、ナス夫カレーとお呼びください」
ペットントン「ナス夫カレー?」
ナス夫「そう、おいしいですわよ。いつの時代でも偉い人物というのは名を残すものなんです」
ペットントン「名を残す?」
ナス夫「そう、サンドイッチを発明したサンドイッチ大尉しかり。ビーフストロガロフを発明したストロガロフ伯爵しかり」
ペットントンは、自分の名を冠した「新発売!ペットントンカレー。♪どうしてこんなにうまいのか」「ペットントンまんじゅうはお菓子のホームラン王です」というCMを妄想する。
出来上がったカレーを味見するナス夫。
ナス夫「まずい!外食べに行こう」
ずっこける一同。
交番では警官(高橋等)が、以前ペットントンをいじめた葉波博士(市川勇)を釈放する。
警官「真面目に暮らせよ。じゃあな」
だが葉波博士は即座に交番へ戻る。
警官「だめだよ、社会に出るの。社会に!」
葉波「お願い、もう少し警察にいさせて」
警官「だめ!警察はホテルじゃないんだから」
葉波博士はカメラに向かって、「うちに帰っても、だーれもごはんつくってくれる人いないんだもーん。ごほごほ、わしは哀れな寝たきり博士」とだだをこねる。そこをペットントンが通る。
ペットントン「葉っぱバーガー博士!?」
驚くペットントン。
葉波「もう一度ペットントンをいじめて悪いことをすれば…」
警官「そりゃ、もう一度警察に来てもらうことになるでしょうな」
葉波博士はペットントンを追いかけ、公園で襲う。逃げるペットントンは、たい焼きの屋台を見かける。
たい焼きに刺激されたペットントンは、畑家でまた「名を残すには…」と考える。そこへ庭から葉波博士が入って来て、ペットントンを殴る。
葉波「これぐらい殴れば逮捕してくれるだろう」
葉波は出て行くが、ペットントンは「名を残すには」と何らダメージを受けていない。
葉波博士は交番で「逮捕しろ」と迫るが、そこを通るペットントンは博士を無視。
警官「どうなってんだ」
葉波「おい、ペットントン!」
ふたたび畑家へ戻ったペットントンと葉波博士。葉波は、ペットントンは「人が良すぎる」と落胆しつつ、ペットントンの持っていたたい焼きを食べる。そこへセロリとトマトが帰ってくる。
セロリ・トマト「葉っぱバーガー博士!」
葉波「お久しぶりです」
セロリ「どうも」
セロリはほうきで殴りかかり、トマトはキック。
セロリ「この粗大ゴミが!」
たい焼きを加えたまま叩き出された葉波博士は、「ペットントンとたい焼き!」と何か思いついた様子。
畑家の中でセロリとトマトは喧嘩に。
トマト「このひげばばあ」
セロリ「それを言っちゃおしまいだよ」
葉波博士はペットントンを隠れ家へおびき寄せて監禁。
葉波「お金儲けよ」
葉波博士は方針を転換。たい焼きからヒントを得た、アンコがいっぱいのペットントン焼きで大儲けを企んでいた。
葉波「名前? まあな」
ペットントンは乗り気に。
ペットントン「もたもたせんと、早くつくるムニェ!」
葉波「は、はい」
畑家では、庭でセロリとトマトが対峙。ナス夫が帰宅。
ナス夫「それでは参りましょう!」
ナス夫が指揮棒を振ると、交響曲第九番が壮大に流れ、セロリとトマトは物の投げつけ合いに。
隠れ家では葉波博士がペットントン焼きをつくっていた。ペットントンは「かわいくない!」と試作品にダメ出し。
ペットントン「ダメダメ、もっとペットントンきれい、もっとペットントンかわいいの!」
ペットントンは、葉波博士がせっかくつくった試作品をつぶして、自分で作り始める。
ペットントン「売れて売れて名を残す!これ、元祖ペットントン焼き」
葉波「何が元祖だ。そっちが元祖なら、こっちは本家だ。だいたい、このペットントン焼きのアイディアはこのわしが」
調子に乗るペットントンは、葉波博士に粉をぶっかける。
畑家では、ナス夫がネギ太に後は任せて逃亡。セロリとトマトの死闘がつづく。
そこへ葉波博士が逃げ込んで来た。葉波は、自分は大きなペットントン焼きをつくって儲けたかったのに、ペットントンは小さいペットントン焼きをつくっていると嘆く。興味を持ったセロリたちは、葉波をほったらかして隠れ家へ。
トマト「お母さま、ここでペットントン焼きパーティやりましょうよ」
セロリ「そうしましょう」
ペットントン「やろやろ」
そこへ怒った葉波博士が戻ってくる。
セロリ「タンタカターン」
セロリとトマトは葉波を突き飛ばし逃亡。葉波は逃げるふたりを大砲で攻撃。そば屋のマサト(高木政人)と警官が巻き添えを食う。ペットントンはタイムステッキで時間を戻し、葉波の大砲に石を入れ、葉波をつかまえる。
警官は「あんなところで大砲ぶっぱなすんだもんねえ」と呆れながら葉波博士を連行。
葉波「ペットントン焼きの金儲けは失敗に終わったが、三食昼寝付きの刑務所に戻れるんだから、ま、よしとするか。さあ、おまわりさん、行くぞ!」
走り出す葉波に、引っ張られた警官は「スピード違反だ」と叫ぶ。
畑家の庭では、小百合(川口智子)とガン太(飛高政幸)も参加して、待望のペットントン焼きパーティーが行われた。
小百合「お待たせ、できたわよ」
全部食べようとするセロリにガン太は「ああ、きったねー」。
小百合「ガンちゃん、まだあるわよ」
ガン太とペットントン焼きを独占しようとするセロリは、奪い合う。
【感想】
第15話以来久々に、葉波“葉っぱバーガー”博士が登場。前の登場回と同じく、加藤盟監督が手がけている。
あくの強いエピソードが並ぶこの時期としては珍しく、あまり癖のないコメディ編。加藤演出も第20、28話のようなクレージーな画づくりは封印しており、素直に愉しめる内容になっている。
同じ加藤監督の第10話では庭での喧嘩のシーンに「天国と地獄」が流れていたが、今回は第九。
ウェルメイドにまとまっているという点に加えて、セロリとトマトが目立つのも大人の出番が多かったシリーズ初期を思わせる。畑家の面々の面白さは、この時点で既に円熟の域。ただし、ラストだけとは言え小百合とガン太もしっかり登場しており(これが初期だったら全編、畑家の面々だけで押していただろう)、やはり視聴者の間でガン太たちに人気が集まっていたことが推察される。
悪だくみをしていた葉波博士がやがてペットントンに振り回されてしまうという構造は、不思議コメディーシリーズでは『どきんちょ!ネムリン』(1984)のイビキや『もりもりぼっくん』(1986)のアイアンおばさんでも反復されている。
冒頭でペットントンが妄想に出てくる劇中CMは、第38話の劇中テレビ番組を思わせる安っぽさ…。
葉波博士の隠れ家は、第15話とは別の建物。違うアジトに入居?したということだろう。