『ペットントン』研究

『ペットントン』(1983〜84)を敬愛するブログです。

第25話「根本君のガールハント」(1984年3月25日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

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 畑家では、トマト(東啓子)が「はーるがきーたー」と上機嫌。きょうは終業式で、ネギ太(高橋利安)の成績は絶対上がっているはずだという。そば屋のマサト(高木政人)が「それはどうですかね」と水を差すと、トマトはマサトの顔に石鹸水をお見舞いした。

 

 公園でペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)は、泣いている子どもに出会う。飛行機が木の枝に引っかかってしまっていたのだった。ペットントンは手を伸ばして取ってあげる。

 そこへセロリ(斎藤晴彦)が現れ、ペットントンの友だちの輪を奪う。

セロリ「若い男の子と知り合いになるには」

 だが友だちの輪は加熱するだけだった。あざ笑うペットントン

 

 終業式でもらった通信簿の成績に、落ちこむネギ太。ガン太(飛高政幸)は「Love is over 悲しいけれど〜」と唄う。

ネギ太「ガンちゃん、世の中には優しさだけじゃ解決しない問題があるんだ。アメリカとソ連の核ミサイルの問題とか。郷ひろみ松田聖子が結婚するとかしないとか。問題は、きょうもらったぼくの通知表だよ…」

 成績の悪さに激怒するトマト。ネギ太は「どうぞぶってください」と自分のおしりを突き出す。トマトがフライパンを持ってくると、ガン太が割って入る。

ガン太「おばさんやめてよ!ぶつなら、ぼくのおしりぶって」

 ガン太は「悲しいけれど 終わりにしよう〜」と唄う。

 

 セロリは学生にアプローチするが逃げられる。

セロリ「お前、私のほんとの歳をばらしたね」

ペットントン「違う、違う」

セロリ「じゃあどうしてだよ!」

 テニスのコーチに迫っても結果は同様。ペットントンがシシシと嗤うと、ジャモラー(声:八代駿)が襲来。小百合(川口智子)に助けられる。小百合の笑顔に、ジャモラーもウィンク。

 

 野原動物病院にて、根本(玉木潤)はオールAの通信簿を野原院長(奥村公延)に見せていた。

根本「小百合さんと結婚を前提にしたおつきあいをお認めください」

 困惑する野原院長。

根本「先生、ぼくのこの目を見てください。この目を!」

 何故かうさぎの目がインサート。そこへ小百合がペットントンを連れてくる。

小百合「ペットントン、お願い。根本くんをどこかへ棄ててきて」

 ペットントンは根本をゴミ捨て場に連行し、ポリバケツに頭から押し込んだ。

根本「ぼくは生ゴミじゃない!」 

 

 畑家ではガン太が、ネギ太の代わりに自分のおしりをぶてとまくしたてる。帰宅したナス夫(佐渡稔)。

ガン太「代わりにおれのおしり叩いてもらおうと思って」

ナス夫「どうして?」

ガン太「ネギ太のおしりは、おれのおしりだもん」

 おしりを振るガン太。

ナス夫「何だか判らんが、それできみの気が済むんだったなら、おじさんが叩いてやろう。一度、きみのおしりが叩きたかった…」

 バーン! フライパンが炸裂。

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 ペットントンが根本をポリバケツに押し込んでいる横を、自転車をふたり乗りしたネギ太と小百合が通り過ぎる。

ペットントン「ムニャ。ネギ太、どこ行く?」

小百合「いいところ。ね、ネギ太くん?」

 静かになった根本。ペットントンがポリバケツのふたを開けると、根本は「はっはっはっはっは」と笑う。閉めると泣き声が。

根本「ここはどこ、私は誰?」

 ふたの開け閉めを繰り返すペットントン

根本「ペットントンくん、いい加減に同情してくれてもいいんじゃないですか?」

ペットントン「フニャ、しない!」

 

 事を終えて、恍惚の表情を浮かべるナス夫。

ナス夫「叩かれたくなったらまた来なさい」

ガン太「おれ、何だかおじさんと気が合いそう」

ナス夫「ああ…」 

 

 根本にポテトチップスをおごるペットントン

根本「ずいぶん安い同情ですね」

ペットントン「ムカ!」

根本「きみの同情は喉が渇きますね」

 ジュースを買ってくるペットントン。根本はさらに要求する。

根本「ペットントンくん、同情してくれたついでにもうひとつ同情してくれませんか」

ペットントン「ムニャ?」

 根本は、ペットントンに女の子を紹介してくれと頼む。

 

 男が交番の警官(高橋等)に「助けて!」と叫ぶ。

男「変な人がぼくをバイクに乗せようって。ああ、来た!」

 バイクに乗ってきたセロリ。

セロリ「いらっしゃい、いらっしゃいってばさ」

 男は「ぼく怖い」と警官にすがりつく。

警官「離せ、気持ち悪い」

 

 ペットントンは、若い男を求めるセロリに傷心の根本を紹介する。

セロリ「このガキが」

根本「このしわくちゃが」

 ふたりはペットントンに蹴りを入れた後、喧嘩に。そこへガン太が「Love is over」と唄いながらやって来る。

根本「あのバカはいつ見ても明るくて羨ましいですね」

 うなずくペットントン。根本はガン太を呼び止める。

ガン太「何だよ根本、人がせっかくいい気分でミュージカルしてたのに」

 根本は、ネギ太と小百合が「いいところ」にいると告げ口する。

ガン太「小百合といいところで!」

 ジェラシーを燃やすガン太。

 

 ネギ太と小百合は、砂浜でデートしていた。せつなげなBGMが流れ、スローモーションでいい雰囲気。

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 根本はガン太を挑発し、怒ったガン太は狼男に変身。ネギ太と小百合は、公園の展望台で望遠鏡を見ていた。

根本「どうです、ガン太くん。ぼくの言った通りでしょう。ネギ太は全くひどい男です」

ガン太「ガオー」

 ペットントンはガン太をなだめようとするも、がなるガン太には何も言えない。

根本「ガン太くんという素晴らしいボーイフレンドがいながら、小百合さんに手を出すなんて、ぼくは許せない。ガン太くんはどうなんです?」

ガン太「ガオー」

 ライオンのような雄叫びをあげるガン太。

根本「吼えろガン太、吼えろガン太、戦えガン太!」

 ガン太はネギ太と小百合に向かっていく。

ネギ太「ガンちゃん?」

小百合「正気じゃないわ」

 ガン太はネギ太に噛みつく。慌てるペットントン。近くにいたペンキ塗りのおじさんは呆然。根本は小百合のもとへ歩み寄る。

根本「小百合さん、きみは美しい」

 察した小百合は根本をひっぱたく。

根本「きみはあそこにいるブスよりも、あそこのブスより、あれより、こっちより、あそこより、どれよりきみは美しい」

 根本は、近辺にいた女子高生たちをひとりずつ指差した。小百合はもう一度根本をひっぱたく。怒った女子高生は根本を取り囲む。泣いたり笑ったりしてごまかそうとする根本。

女子高生「何よ、その無気味な笑いは」

 

 やがて冷静になったネギ太たち。

ネギ太「ぼくとガンちゃんを喧嘩させたのもあいつのせいだし」

ガン太「そう言われてみれば根本のやつ、おれにジェラシー妬かせようとして」

 3人は、野原病院へ行って遊ぶことに。

 

根本「判りました、きみたちはぼくとやる気ですね」

 追いつめられた根本は、ペンキ塗りのおじさんのもとへ行く。

根本「ちょっとお借りします」

おじさん「いいけどよ。おい、どうするんだ」

 根本はペンキの女子高生たちにペンキをぶっかける。みなはペンキのかけ合いになり、辺りは狂乱状態に。喜ぶ根本。ペットントンはタイムステッキで時間を戻して、女子高生たちに風船をくくりつけてスカートをめくり、その場をごまかした。

ペットントン「タコ!」 

 

 やがて冒頭の公園に戻ったペットントンの前に、飛行機を取ってあげたあの子どもが現れる。

子ども「ペットントン、遊ぼう」

 ペットントンと子どもたちは、砂場で愉しく遊ぶ。いままでの喧騒が嘘のように、穏やかな時が流れた。

【感想】

 ネギ太の通知表に始まって、セロリのボーイハント、ガン太とナス夫の痴態、根本の失恋、ネギ太と小百合のラブラブ、狼男の襲撃、ラストのパニック…何の関連もない事件が次々繰り出される怪作。奇想という意味では、他の浦沢義雄作品にもっとすごいのがあるかもしれないが、これほど思いつくままに発作的な展開がつづられたというのはさすがにあまり例がないのでは。浦沢先生は、自分の役割は「話の展開」だけだというようなことをかつて述べていたけれども(「アニメージュ」2001年3月号)、こんだけ脈絡がないと果たして「展開」と呼んでいいのか気になる。

 こんな骨子のないシナリオを巧みに映像化してみせるのは、さすが浦沢先生と名コンビの坂本太郎監督。坂本演出は第40話のようにドラマティックに盛り上げるのも得意だが、こういう唐突な浦沢脚本を一篇の映像作品に仕立ててしまうあたりも名コンビと称させるゆえんかもしれない(他の監督陣もさすがプロだけあってトンデモ脚本を訥々と映像化しているのだが、一種の運動体とも言うべきリズムを醸し出している点でやはり坂本監督が突出している)。

 

 ナス夫とガン太のものすごいシーンに関しては、こちらのサイト(http://www.style.fm/as/05_column/animesama32.shtml)でも言及されている。おしりを叩くのは以前の第6話(広田茂穂監督)で既にあったけれども、今回を経て同じ坂本演出の第31話ではさらにグレードアップし、大人たちが踊るようにネギ太とガン太のおしりを叩いていた。

 根本の「生ゴミ」は、バラエティ『カリキュラマシーン』(1974)から『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)、『うたう!大龍宮城』(1992)、『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003)、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)など頻出の浦沢ワードである。

 根本が泣いたり笑ったりするのは、第33話でも見られる。

 

 ネギ太は自分の代わりに叩かれているガン太を放置して、小百合とデート。久々に、小学生とは思えないようなリア充ぶりを見せつける。

 ネギ太と小百合の逢い引きの場面は逗子のロケーション。ふたりが海辺を駆けるシーンはいい雰囲気で、第13話第40話など坂本監督はふたりのロマンティックな場面を好んで演出している。余談だが、坂本演出の初恋譚では他に『魔法少女ちゅうかないぱねま!』(1989)の第5話「砂嵐の少女」や『美少女仮面ポワトリン』の第36話「お彼岸ライダーの謎」が印象的であった。

 ペットントンが小百合とジャモラー に遭遇する公園も逗子で、後方に椰子の木が映っている。 

 ガン太が唄っているのは欧陽菲菲「ラヴ・イズ・オーヴァー」で1984年に流行っていた曲。同年の『金曜日の妻たちⅡ 男たちよ、元気かい?』でもカラオケで唄うシーンがあった。

 冒頭とラストで飛行機の子どもが出てくるあたり、一応つながっていると言えば言えるけれど。推測だが、脚本ではペンキのかけ合いで終わっていて、ラストの砂場は統一感を出すための監督か誰かのアイディアではないだろうか(1980年代の浦沢脚本は、騒乱の後で放り投げるように終わってしまうことも多い)。

 『ペットントン』も後半戦、狂気はとまらない。

 

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