『ペットントン』研究

『ペットントン』(1983〜84)を敬愛するブログです。

第8話「ゴリラvsびっくり看護婦」(1983年11月20日放送 脚本:浦沢義雄 監督:坂本太郎)

【ストーリー】

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 朝から小遣いの値上げを要求するナス夫(佐渡稔)。冷たいトマト(東啓子)とネギ太(高橋利安)。

 

 ペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)は、手を伸ばして車を止め、緑のおばさんの手伝いをしていた。工事の人や野原動物病院院長(奥村公延)にも頼られるペットントン。しかし野原動物病院の看護婦トモコ(小出綾女)だけは、いまだにペットントンを見ると、髪を逆立てて気絶してしまう。寝込んだトモコを前に、クールな小百合(川口智子)。

小百合「え、また? トモコさんのペットントンアレルギーにも困ったもんね。いいわ、私あとでトモコさんと話し合ってみる」

 

 セロリ(斎藤晴彦)は、居候なのだから人のためより私のために働けと、ペットントンを説教していた。セロリはペットントンにお茶を持ってくるよう命じるが、ペットントンは腕を伸ばしてお茶っ葉を持ってきてしまい、お茶かと思ってお茶っ葉を飲んだセロリは激怒。呆れるネギ太。

 

 たこ焼きを食べながら、公園で話す小百合とトモコ。

トモコ「ペットントンを好きになる努力?」

小百合「うん」

 だが、トモコはペットントンのことを考えただけで髪が逆立ってしまうのだった。 

 ペットントンの友だちの輪のお告げで、トモコはペットントンに慣れるべきだと判明。トモコはトマトにペットントンの写真を借り、公園のベンチでそれを見て慣れようと頑張っていた。

トモコ「とりあえず、慣れること…」

 だがペットントンを目にしただけで、トモコの髪は逆立ち、逃げ出してしまって卒倒。野原院長は、トモコにきょうはもう休んでいいと優しく告げる。

 

 「みんなと仲良しになりたい」と街を淋しくさまようペットントンの前に、物陰からジャモラー(声:八代駿が。

 

 神社でヨーコ(若林一美)が、トモコについてペットントンを諭す。

ヨーコ「それは、ペットントンがそのジャモラーを嫌いなことと同じじゃないかしら」

ペットントン「ムニャ?」

ヨーコ「ペットントンがこの地球の人たち全員と仲良くしたいって気持ちも、判らないことはないけど、不可能よ」

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 そんなときに、食べ過ぎで苦しんでいるゴリラが、動物園から野原動物病院に運ばれた。トモコが早退したため、白衣を着た小百合とネギ太が注射を手伝う。

院長「わしの注射は効くだろう」

 だがゴリラは、注射によって元気になりすぎて暴れ出した。

小百合「ちょっと効き過ぎちゃったみたい」

ネギ太「だいぶ効きすぎだよ!」

 ガラスを割って外へ出たゴリラは、ターザンのようにクレーンにつかまって騒ぐ。院長はゴリラに向かって叫ぶ。

院長「話し合おう。話せば判る。それが民主主義の定義だ!」

 話し合おうと連呼する院長を、ゴリラは掴んで振り回す。弾みでゴリラにディープキスされた院長はのびた。

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 小百合に事態を知らされて駆けつけたトモコを、ゴリラはクレーンに乗って威嚇。トモコは果敢にゴリラに飛びかかり、乱闘を繰りひろげる。やはりネギ太から連絡を受け、現れたペットントン

トモコ「ぼけっとしないで、あんたも戦いなさい!」

 戦いの末に、トモコはゴリラを蹴り倒す。だがペットントンを見たトモコは、また気絶。ペットントンはタイムステッキで時間を巻き戻すと、ゴリラへ向かって動物語でゴリラに説得を試みる。しかしゴリラは止まらず、ペットントンを投げ飛ばす。トモコと共闘するペットントン。ふたりでゴリラを殴り倒す。戦いすんで、トモコはアレルギーを克服、ペットントンを見ても平気になっていた。

トモコ「もう大丈夫よ、もう平気よ。私たち、ほんとの友だちになれるのよ」

  パトカーでネギ太と小百合が駆けつけると、嬉しくなったペットントンは膨らんで浮かび上がる。

 

 夕暮れて、今度はネギ太が小遣いの値上げを要求する。冷たいトマトとナス夫。セロリが唄いながら来る。

セロリ「ペットントンは?」

ネギ太「トモコさんとデート!」

セロリ「トモコさんとデート?」

 セロリがネギ太と腕を組むと、ネギ太はパンチ。

セロリ「あいたー!!」

 

 ペットントンとトモコは、ふたりで夕空に浮かんでいた。

 

【感想】

 変なタイトル。いつもペットントンにびっくりして気絶する看護婦がゴリラと戦うという、そのままの内容である。1度見た際にはそれほどでもなかったが、2、3度見直すと笑いが止まらなくなる奇篇。

 

 タイトルロールのゴリラは前半全く登場せず、唐突に出てきたかと思ったら突然暴れ出す。このあたり、構成を厳密に考えず、思いつくままに書いていくという浦沢義雄脚本の特質がよく出ている。とりあえず今回は、びっくりして気絶するトモコがメインの話にしようと書き進めたけれども、気絶ねたは前半で尽きてしまって面白くならない。そこで後半はゴリラとのバトルにしようと執筆中に思いついたのだろうが、それならば普通は前半を修正して伏線・前ふりを用意する。だが浦沢脚本は、そんな小細工を弄したりしない。

 後年の浦沢脚本による『美少女仮面ポワトリン』(1990)や『不思議少女ナイルなトトメス』(1991)では毎度怪人が登場して戦うフォーマットになっていたので、冒頭から敵役が出てきて最後に倒すという比較的王道寄りのスタイルになることが多かった。一方、『ペットントン』の場合はそのような制約がないゆえ、気の向くままストーリーをつづっていくと何とも言い難い奇妙な構成になってしまう。しかし、だからつまらないというわけではなくて、脈絡のなさが却って笑いを誘うのだから全く天才脚本家という他はない。

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 ゴリラはリアリティゼロで、人間がゴリラの仮面をつけているようにしか見えない。そんなゴリラがいきなりクレーンにぶらさがって暴れるのだから、珍なる眺めというか何というか…。このゴリラのターザン化は、誰のアイディアなのだろう。

 クレジットでは山崎清氏の名があり、ゴリラのスーツアクターであろう。山崎氏は第16話第38話にも出演している(次作『どきんちょ!ネムリン』〈1984〉では、レギュラーのスーツアクターを担当)。

 

 全編に渡って野原院長の出番が多いのも珍しく、ゴリラに突き飛ばされ振り回されるアクション(?)まで披露。院長はいつもさりげなく脇を固めていたが、主役の回は最後までなかった。

 演じる奥村公延氏の代表作のひとつは伊丹十三監督の映画『お葬式』(1984)であり、『ペットントン』終了の3か月後に公開された。伊丹の『「お葬式」日記』(文藝春秋)によると、1984年6月から8月までが撮影であり、『ペットントン』と平行している。もしかすると奥村氏の主役回のアイディアもあっても、『お葬式』に忙殺されて時間を捻出できなかったのかもしれない(『ネムリン』では奥村氏の主役エピソードがあった)。

 

 トモコさんはいいキャラなのだけれども、このエピソードでペットントンと和解した以後は活かしようがなくなったのか、出番が減り、やがて存在が消滅。『ペットントン』の主軸は、大人から子ども(や無生物)に移行していくことになる。

「お葬式」日記

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