『ペットントン』研究

『ペットントン』(1983〜84)を敬愛するブログです。

第6話「秋風に乗ってトントン家出」(1983年11月7日放送 脚本:浦沢義雄 監督:広田茂穂)

【ストーリー】

 ペットントン(声:丸山裕子 スーツアクター:高木政人)に芸を仕込んで、サーカス団を作って儲けたいセロリ(斎藤晴彦)。ペットントンは玉乗りの練習をさせられていた。

 トマト(東啓子)は「あたしはあなたの味方よ、あたしがいる限り、絶対サーカスなんかやらせないから安心していいのよ〜」と同情するそぶりを見せるが、そのかわり食器を洗えとペットントンに家事を命じる。食器の中からジャモラー(声:八代駿)が出現。

ジャモラー「ペットントンの髪の毛おいしいジャモラー」

  逃げ回るペットントン

 雨が降ってきたので、ネギ太(高橋安)はペットントンに傘を届けてくれと電話で頼んだ。ペットントンは届けに行く途中、雨に濡れた制服姿のヨーコ(若林一美)に出会った。ペットントンはネギ太を放ったらかしていっしょに帰ってしまう。電話ボックスで雨が上がるのを待っていたネギ太は、ふたりのツーショットを見かける。ネギ太にからかわれると、赤くなって膨らむペットントン

 膨らんで飛ぶペットントンは、区役所に現れる。友だちの輪のお告げにより、ナス夫(佐渡稔)は、膨らんで飛ぶペットントンを区長(石井喧一)の宣伝用アドバルーンにしようと張り切る。

区長「よろしく頼むよ、畑くん。きみの出世がかかってるからね〜」

ナス夫「はい、まかしてください!」

 無言で窓の外へ浮かんでいくペットントン

 たまりかねたペットントンは夜になっても帰って来ない。家出してしまったのだった。

 

 ネギ太は小百合(川口智子)、ガン太(飛高政幸)に連絡。

小百合「え、ペットントンが秋風に乗って家出!?」

ガン太「わかった。いっしょにさがそう。おれ、ネギ太の頼みなら何でも聞く」

 ネギ太とセロリ、小百合とガン太は捜索に向かう。

ガン太「ちぇっ、小百合もいっしょか」

 電車やケーブルカーを乗り継いで、高尾山へやってきた一行。ガイドの女性は(川村万梨阿)はペットントンが飛んでいくのを見たという。

 ペットントンは山で、愉しげに猿や鳥、魚と遊んでいた。それを見た一同。

小百合「あんなペットントン初めて見た。愉しそう」

 野原で一行とペットントンは遭遇。ネギ太は帰ろうと呼びかけるが、ペットントンは厭がる。

ペットントン「帰りたくないトントン」

ネギ太「どうして!?」

 セロリは縄を投げる。みなが引っ張ると、何故か山中にいた警官(吉野恒正)が縛られていた。怒る警官は銃を発泡。

警官「こらっ、バカにするな!」

 

  みなは川原にテントを張っていた。

ガン太「ペットントン捜索隊、出発します!」

セロリ「うん、健闘を祈る」

 ふらふらしていたペットントンは落とし穴に落ちる。ネギ太たちの仕掛けだった。

ネギ太「どうして帰りたくないの? どうして」

ペットントン「みんな、ペットントンを使うトントン」

 ペットントンは、セロリたち大人が自分を利用しようとするのが厭なのだった。

小百合「ガンちゃん。私たち、何か悪いことやってるみたい」

ガン太「小百合もそう思うか。おれも」

 ネギ太は、このままペットントンと別れることを決意。

ネギ太「ペットントンはぼくの家で住むより、この森で住んだほうがいいんだ」

 走り去っていくネギ太。追いかけようとするペットントンを、ガン太と小百合は「ネギ太だってつらいんだ」「きょうのネギ太くんはいつものネギ太くんと違うわ」と止める。

ガン太「おれ、惚れ直したぜ」

 

 ペットントンを逃がしたネギ太に、セロリは激怒。

セロリ「ああ、判った。私が年寄りだと思ってバカにしてるな、お前は」

ネギ太「バカになんかしてないよ。ただ尊敬しないだけだよ」

 ネギ太は覚悟を決めていた。

ネギ太「さあ、叩いてよ。気が済むまで叩いてよ!」

 ネギ太はおしりを丸出しに。

ガン太「ネギ太のやつ、かわいいおしりしてんな」

小百合「何言ってんのよ!」

 思いっきり叩こうとするセロリ。ペットントンはタイムステッキで時間を止めると、おしりの上に鍋を置いて阻止。

ネギ太「ありがとう、ペットントン!」

 

 結局畑家に戻ったペットントンは、ドラム缶乗りをしながらセロリを踏み潰し、皿洗いをしながらトマトに洗剤の泡をかけて報復。市役所の女子職員にキスされても膨もうとしない。見ていたネギ太と小百合は笑う。

ネギ太「綺麗な人じゃないと膨れないんだよね」

小百合「うん、私みたいに!」

 アドバルーンにも協力せず、ナス夫は区長に出世はあきらめろと宣告されるのだった。 

【感想】

 ネギ太とペットントンがメインの回だが、ガン太と小百合もペットントン捜索に参加していて出番がある。全体としては平凡なのだけれども、細部がいろいろと面白い。

 

 市長役の石井喧一氏は、『バッテンロボ丸(1982)や『勝手に!カミタマン』(1985)などこの不思議コメディーシリーズに幾度も出演している。ペットントンに驚くシーンは、不明瞭な語を発してさりげなく強烈。ナス夫の佐渡稔氏とは同じ東京ヴォードヴィルショーに所属しており、さすがに息の合った共演ぶり。

 ガイドの女性役は、当時声優デビューしたばかりの川村万梨阿氏。川村氏は、この時期には同じ東映制作の『太陽戦隊サンバルカン』(1981)や『宇宙刑事シャリバン』(1983)、『TVオバケてれもんじゃ』(1985)にも顔を出している。 

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 ロケ地は高尾のようで、不コメとしては珍しい。『ペットントン』のポスター的ヴィジュアルとして川原でペットントンと子ども3人が映った写真を時おり目にするが、おそらく今回の撮影の際に撮ったと思われる。

 ペットントンスーツアクター(高木政人)はしゃがんだ姿勢で中に入るという過酷な演技をこなしている。『ロボット8ちゃん』(1981)や『バッテンロボ丸』では大人がスーツに入るゆえ、どうしても子どもより大きくなってしまい、それゆえ『ペットントン』ではそのような措置がとられたのだった。小さく人間っぽくない体型になったおかげで、山のシーンでは猿や鳥が怖がらず、平気でペットントンのそばに寄ってくる(動物プロの“役者”で訓練されているのかもしれないが)。短いショットながら、ちょっと感動的であった。

 

 クライマックスでは、ネギ太のおしりが映る。『もりもりぼっくん』(1986)の第30話や第37話でも少年のおしりが堂々と映されており、おしりが直接的には出てこない『どきんちょ!ネムリン』(1984)や『勝手に!カミタマン』(1985)にも少年の裸は頻出。誰か少年好きの人がスタッフの中枢にいたとしか思えない。

 セロリはおしりを叩こうとしており、今回は回避されるが、第25、31話ではおしり叩きが見せ場となっている。

 

 ペットントンの手が川の向こう岸まで伸びる場面では、平生のように手を本当に伸ばして撮影するのは困難であったのか、唯一アニメ処理になっている。質感が違っており相当変な印象で、以後このような措置がなかったのは納得。 

 序盤でジャモラーが天井をうごめくという珍しい行動をとる。こんな動きをしたのは後にも先にもこのシーンだけで、セットの天井をひっくり返して撮ったのだろうか。

 

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